「このレンズは50mmです」「こっちは24mmです」
カメラを始めると必ず耳にする「〇〇mm」という数字。
これが「焦点距離」です。
多くの初心者は「焦点距離=ズームの倍率」だと思っています。
数字が大きければ遠くのものが大きく写る(望遠)。数字が小さければ広く写る(広角)。
確かに間違いではありませんが、それは焦点距離が持つ特性のほんの一部に過ぎません。
実は、焦点距離を変えることは、単に「写る範囲(画角)」を変えるだけでなく、「世界の見え方(パースペクティブ)」そのものを物理的に歪める行為なのです。
なぜポートレートには85mmが選ばれるのか?
なぜ風景写真家は広角レンズを好むのか?
その理由は、単に「全身が入るから」とか「広い景色が入るから」だけではありません。
そこには、レンズの焦点距離が生み出す「圧縮効果」や「遠近感の誇張」という光学的な魔法が隠されているからです。
この記事では、焦点距離の定義といった基礎知識から、センサーサイズによる換算問題、そしてプロが使い分ける「焦点距離ごとの視覚効果」まで、物理学的な視点を交えながら全角1万文字を超えるボリュームで徹底解説します。
第1章:焦点距離(Focal Length)の物理的定義

まず、言葉の意味を正しく理解しましょう。
焦点距離とは、文字通り「焦点(ピント)までの距離」のことですが、具体的にはどこからどこまでの距離なのでしょうか。
1-1. レンズ中心からセンサーまでの距離
物理学的な定義は以下の通りです。
無限遠(遥か彼方)にある被写体にピントを合わせたとき、レンズの「主点(光学的な中心)」から「撮像面(イメージセンサー)」までの距離。
つまり、「50mmのレンズ」とは、無限遠にピントを合わせたときに、レンズの中心からセンサーまでが50mm(5cm)離れているレンズのことを指します。
- 焦点距離が短い(例:24mm):レンズとセンサーが近い。光が急角度で広がるため、広い範囲が写る(広角)。
- 焦点距離が長い(例:200mm):レンズとセンサーが遠い。光の通り道が狭いため、狭い範囲が切り取られる(望遠)。
1-2. ズームレンズと単焦点レンズ
レンズには2つのタイプがあります。
- 単焦点レンズ:焦点距離が固定されている(例:50mm)。自分で動いて構図を決める必要があるが、画質が良く、F値が明るい。
- ズームレンズ:焦点距離を変化させられる(例:24-70mm)。その場から動かずに画角を変えられる便利さがある。
第2章:焦点距離と「画角」の関係
一番分かりやすい効果が「画角(Angle of View)」の変化です。
焦点距離と画角は反比例の関係にあります。
| 分類 | 焦点距離(フルサイズ基準) | 画角のイメージ | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 超広角 | 12mm 〜 20mm | 人間の視界を遥かに超える | 強烈な遠近感。端が歪む。 |
| 広角 | 24mm 〜 35mm | ぼんやり全体を見渡した感じ | スナップや風景の定番。 |
| 標準 | 40mm 〜 60mm | 一点を注視した時の視界 | 最も自然。歪みが少ない。 |
| 中望遠 | 70mm 〜 135mm | 相手と会話する距離感 | ポートレートの王道。歪まない。 |
| 望遠 | 135mm 〜 300mm | 遠くのものを引き寄せる | 圧縮効果が強い。 |
| 超望遠 | 400mm 〜 | 双眼鏡の世界 | 野鳥、スポーツ、飛行機。 |
第3章:ここからが本番!「パースペクティブ(遠近感)」の魔法
焦点距離の本当の面白さは、ここからです。
「同じ大きさで写るように自分が前後に移動して撮る」と、焦点距離の違いが劇的に現れます。
3-1. 広角レンズの「誇張効果」
広角レンズ(24mmなど)で、被写体にグッと近づいて撮るとどうなるか。
- 手前のものはより大きく、奥のものはより小さく写ります。
- 遠近感が極端に強調されます。
これを利用すると、「鼻デカ犬」の写真や、足を長く見せるポートレートが撮れます。
逆に、普通に人物を撮ると顔が伸びて写るため、ポートレートでは嫌われる傾向にあります。
3-2. 望遠レンズの「圧縮効果」
望遠レンズ(200mmなど)で、遠くから撮るとどうなるか。
- 手前のものと奥のものの大きさの差がなくなります。
- 遠近感が失われ、背景が被写体のすぐ後ろに迫ってくるように見えます。
これを「圧縮効果(Compression Effect)」と呼びます。
桜並木が密集して見えたり、人混みがギュウギュウに見えるニュース映像などは、この効果を使っています。
背景を整理し、被写体を浮き立たせることができるため、ポートレートや花の撮影で多用されます。
第4章:センサーサイズと「35mm換算」の壁
カメラ初心者を悩ませる最大の要因がこれです。
「50mmのレンズを買ったのに、カメラにつけたらなんか狭い(望遠っぽい)!」という現象です。
4-1. クロップファクター(焦点距離倍率)
第1章で説明した通り、焦点距離は「レンズとセンサーの距離」という物理的な長さですが、実際に写る範囲(画角)は「センサーの大きさ」によって変わってしまうのです。
- フルサイズセンサー:レンズ表記通りの画角(50mmは50mm)。基準となります。
- APS-Cセンサー:センサーが小さいため、周りが切り取られて写ります(望遠になる)。
- ソニー・ニコン・富士フイルム:1.5倍(50mm → 75mm相当)
- キヤノン:1.6倍(50mm → 80mm相当)
- マイクロフォーサーズ:さらにセンサーが小さい。
- オリンパス・パナソニック:2.0倍(50mm → 100mm相当)
この「〇〇mm相当」という考え方を「35mm判換算」と呼びます。
レンズを買う時は、自分のカメラのセンサーサイズに合わせて、換算後の画角をイメージする必要があります。
APS-C機を使っているなら、レンズの数字に「1.5」をかける癖をつけましょう。
「30mmのレンズか…かける1.5だから…45mm(標準レンズ)くらいだな」と瞬時に変換できれば脱初心者です。
第5章:焦点距離ごとの「ボケ」の違い

F値が同じでも、焦点距離が変わればボケの量は変わります。
5-1. 望遠ほどボケる(被写界深度が浅い)
物理法則として、「焦点距離が長いほど、ピントの合う範囲(被写界深度)は薄くなる」という性質があります。
- 24mm F2.8:背景があまりボケない。パンフォーカス(全体にピントが合う)になりやすい。
- 200mm F2.8:背景がトロトロに溶ける。被写体だけが浮き上がる。
もし強烈なボケが欲しいなら、高いF1.2のレンズを買うのも手ですが、「今のレンズのまま、ズームを望遠側(テレ端)にして撮る」だけでも、ボケ量は劇的に増えます。
第6章:プロが教える!シーン別・焦点距離の選び方
「この景色ならとりあえず広角かな?」
これでは普通の写真しか撮れません。プロは明確な意図を持って焦点距離を選びます。
シーン1:カフェでの料理写真(テーブルフォト)
推奨:35mm 〜 50mm
スマホ(約24-28mm)だと広角すぎて、お皿の形が歪んで写ってしまいます。
少し離れて35mmや50mm(換算)で撮ると、歪みがなくなり、料理が美味しそうに見えます。
シーン2:ポートレート(人物撮影)
推奨:85mm 〜 135mm
広角で寄ると顔がデカくなり、標準(50mm)だと少し生活感が出ます。
中望遠(85mm)は、顔の形を最も美しく整え、背景を適度にボケさせて人物を引き立てる「魔法の画角」です。
シーン3:ダイナミックな風景
推奨:16mm 〜 24mm
ただ広く撮るのではなく、「足元の岩や花」に極端に近づいて撮ります。
手前の主役をデカく、背景の空を広く入れることで、肉眼を超えた迫力が生まれます。
シーン4:街角スナップ
推奨:28mm, 35mm, 50mm
これは好みですが、以下のような使い分けが一般的です。
・28mm:その場の雰囲気、状況説明を含めたスナップ。
・35mm:少し引いた視線。日常感。
・50mm:注目した被写体を切り取る視線。主観的。
シーン5:野生動物・野鳥(ワイルドライフ)
推奨:400mm 〜 600mm(またはそれ以上)
野生の動物は警戒心が強く、近づけません。
圧倒的な望遠レンズで遠くから引き寄せ、背景を大きくボカして被写体を浮かび上がらせる必要があります。
「焦点距離こそが正義」と言われる世界です。
シーン6:星空・天の川(アストロフォトグラフィー)
推奨:14mm 〜 20mm
地上の風景と広大な天の川を同時に写すには、超広角レンズが必須です。
さらに、焦点距離が短いほど「星が点で写る時間(500ルール)」が長くなるため、ノイズを抑えて明るく撮ることができます。
星景写真では「1mmの違い」が写る星の数を変えます。
第7章:単焦点レンズの「50mm」が基本と言われる理由
写真学校や入門書で、必ず「最初は50mm単焦点レンズを買いなさい」と言われます。
なぜズームではなく、不便な50mmなのでしょうか。
7-1. 人間の「注視」に近い画角
人間の視野全体は広角レンズに近いですが、「何かに意識を集中して見つめた時の視野」は50mmに近いと言われています。
そのため、50mmで撮った写真は「見たまま」の自然な印象を与えます。
7-2. フットワークを鍛える養成ギプス
ズームができないので、大きく撮りたければ自分が歩いて近づき、広く撮りたければ下がるしかありません。
この「自分の足で距離感を作る」練習こそが、写真上達の最短ルートだからです。
これを繰り返すことで、ファインダーを覗かなくても「ここから撮ればこう写る」という感覚(画角感覚)が身につきます。
第8章:ピント位置で画角が変わる?「フォーカスブリージング」の秘密
「70-200mmのレンズを200mmにして撮っているのに、近くのものにピントを合わせると、なぜか少し広角(190mmくらい)になった気がする」
気のせいではありません。これは物理的な現象です。
8-1. 有効焦点距離の変化
実は、レンズに記載されている「200mm」というスペックは、あくまで「無限遠(∞)にピントを合わせた時の焦点距離」です。
一般的なインナーフォーカス方式のレンズでは、近くのものにピントを合わせるために内部のレンズ群を移動させると、光学的に焦点距離が短くなる(画角が広がる)傾向があります。
これを「フォーカスブリージング(Focus Breathing)」と呼びます。
写真撮影ではあまり問題になりませんが、動画撮影では「ピントを送るたびに画面がカクカク動く(画角が変わる)」ため、非常に嫌われます。
最新の「動画対応レンズ」や「ブリージング補正機能付きカメラ」は、この画角変化をデジタル的にクロップしてキャンセルしています。
第9章:広角は樽型、望遠は糸巻き型(歪曲収差)
焦点距離とセットで覚えておきたいのが「歪曲収差(Distortion)」です。
焦点距離によって、直線の歪み方が変わります。
9-1. 樽型収差(Barrel Distortion)
広角レンズ(24mm以下)で発生しやすい歪みです。
画面の中心が膨らみ、四隅がすぼまるような形(樽の形)になります。
ビルなどの直線を撮ると、外側に膨らんで写ります。
9-2. 糸巻き型収差(Pincushion Distortion)
望遠レンズ(100mm以上)で発生しやすい歪みです。
画面の中心が凹み、四隅が引っ張られるような形(座布団の形)になります。
いずれも、Lightroomの「レンズプロファイル補正」にチェックを入れるだけで一発で直りますが、光学的な特性として知っておきましょう。
第10章:ちょっとマニアックな「画角の計算式」
「なぜ50mmは46度の画角になるのか?」
興味がある理系の方のために、計算式を紹介します。
覚えなくて大丈夫ですが、仕組みを知ると面白いです。
θ = 2 × arctan ( d / 2f )・d:センサーのサイズ(対角線長など)
・f:焦点距離
・arctan:アークタンジェント(逆正接)
この式から分かるのは、「センサーサイズ(d)が大きくなると、画角(θ)も大きくなる(広角になる)」ということです。
フルサイズ(dが大きい)で使う50mmが標準画角で、APS-C(dが小さい)で使う50mmが望遠画角になる理由は、この数式で完全に証明できます。
第11章:焦点距離ごとの「ポートレートの印象」完全比較

人物撮影において、焦点距離の選択は「被写体をどう見せたいか」という意思表示です。
35mm、50mm、85mm、135mm。それぞれの焦点距離が持つ「感情」を言語化しました。
| 焦点距離 | 鑑賞者との距離感 | 与える印象 | 適したシチュエーション |
|---|---|---|---|
| 35mm | 隣に座っている距離 | 親近感、ドキュメンタリー、日常。 | カフェデート、子供と遊んでいる様子。 |
| 50mm | 向かい合って話す距離 | 誠実、ありのまま、標準的。 | 作品撮りの基本、何気ないカット。 |
| 85mm | 一歩引いて見つめる距離 | 憧れ、美化、ドラマチック。 | バストアップのポートレート、宣材写真。 |
| 135mm | 遠くから舞台を見る距離 | 非日常、浮遊感、幻想的。 | 全身を入れて背景を溶かしたい時。 |
第12章:パンフォーカスと「過焦点距離」の物理
風景写真を撮る人が必ず知っておくべき概念に「過焦点距離(Hyperfocal Distance)」があります。
9-1. パンフォーカスとは?
手前の花から奥の山まで、画面全体にピントが合っている状態です。
これを実現するには、F値を絞り(F8〜F11)、焦点距離を短く(広角に)する必要があります。
9-2. どこにピントを合わせるのが正解か?
「遠くの山までクッキリさせたいから、ピントリングを無限遠(∞)に回す」
これは半分正解で、半分間違いです。
無限遠に合わせると、手前の景色がボケてしまうことがあります。
ここで登場するのが「過焦点距離」です。
これは「無限遠までピントが合うギリギリ手前の距離」のことです。
例えば、24mm F8レンズの場合、過焦点距離は約2.4メートルです。
つまり、無限遠ではなく「2.4m先」にピントを合わせれば、その半分の距離(1.2m)から無限遠まで、全てにピントが合うのです。
過焦点距離を超えて遠くにピントを合わせるのは、被写界深度の「奥側(無駄な部分)」を捨てていることになります。
「無限遠マークの少し手前」に合わせるテクニック(置きピン)は、この物理法則に基づいています。
最近のカメラなら、距離指標を見ながら調整できます。
「望遠レンズを使うと手ブレしやすい」とよく言われますが、これには明確な計算式があります。
10-1. 「1/焦点距離」秒の法則
手ブレせずに手持ち撮影ができる限界のシャッタースピードは、一般的に以下のように言われています。
1 / (焦点距離) 秒例:
・50mmレンズ使用時 → 1/50秒以上
・200mmレンズ使用時 → 1/200秒以上
焦点距離が長くなると、画角が狭くなるため、ほんのわずかな手の揺れでも画面内では大きなブレとして記録されてしまいます。
高画素機(4000万画素以上)の場合はさらにシビアで、「1 / (焦点距離 × 2)」秒くらいまで速くしないと微細なブレが目立ちます。
10-2. 手ブレ補正(IS/VR/OSS)の効果
最近のレンズやボディには強力な手ブレ補正機能が搭載されています。
「5段分補正」なら、シャッタースピードを5段分遅くしてもブレない計算になります。
- 200mmレンズ(本来は1/200秒が必要)
- 5段分の補正があれば、1/6秒でも手持ち撮影が可能!
ただし、被写体ブレ(相手が動くことによるブレ)は手ブレ補正では防げないので注意が必要です。
第14章:ズームレンズの「F値変動」に注意
多くのキットレンズ(安価なズームレンズ)は、ズームするとF値が暗くなる「可変F値」を採用しています。
例:18-55mm F3.5-5.6
- 広角側(18mm)ではF3.5で明るい。
- 望遠側(55mm)にすると、自動的にF5.6まで暗くなる。
「あれ?勝手に暗くなった?」と故障を疑う初心者が多いですが、これは仕様です。
望遠側でも明るさを維持したい場合は、「F2.8通し(大三元レンズ)」などの高級レンズが必要になります。
第15章:焦点距離を操る魔法のアイテム
レンズを買い足さなくても、焦点距離を変えられるアクセサリーが存在します。
賛否両論ありますが、知っておくと撮影の幅が広がります。
15-1. テレコンバーター(エクステンダー)
ボディとレンズの間に装着し、焦点距離を1.4倍や2.0倍に伸ばすレンズです。
例:200mmレンズ + 2倍テレコン = 400mm
メリット:
・重い超望遠レンズを買わなくても、手持ちのレンズで超望遠撮影ができる。
デメリット:
・F値が暗くなる(1.4倍なら1段、2倍なら2段暗くなる)。
・画質が少し低下する。
・オートフォーカスが遅くなることがある。
15-2. 中間リング(エクステンションチューブ)
これもボディとレンズの間に装着しますが、レンズが入っていないただの筒です。
焦点距離そのものを変えるわけではありませんが、「レンズを前方に繰り出す」ことで、最短撮影距離を劇的に短くします。
つまり、普通の50mmレンズが「簡易マクロレンズ」に早変わりします。
花のアップなどを撮りたい時に、バッグに一つ入れておくと便利です。
第16章:コラム|デジタルズームと光学ズームの決定的な違い

スマホでお馴染みの「デジタルズーム」と、一眼カメラの「光学ズーム」。
この2つは似て非なるものです。
16-1. 光学ズーム(Optical Zoom)
レンズを物理的に動かして、光の屈折を変えて拡大します。
画質の劣化は一切ありません。
一眼カメラのズームレンズはこれです。
16-2. デジタルズーム(Digital Zoom)
写った画像の中央を切り抜いて(クロップ)、無理やり引き伸ばして(アップスケーリング)表示します。
画質は確実に劣化します。
スマホでズームしすぎると画質がガサガサになるのはこのためです。
ソニーのカメラなどに搭載されている機能です。
ただのデジタルズームではなく、AIや超解像技術を使って「失われた画素を推測・復元」しながら拡大するため、画質劣化が非常に少ないのが特徴です。
動画撮影時や、あと一歩寄りたい時にプロでも使う人が増えています。
第17章:焦点距離に関するよくある質問(FAQ)全25問
Q1. 最初に買うべき単焦点レンズは何ミリですか?
A. APS-Cなら30mm〜35mm、フルサイズなら50mmです。
これらは「標準画角」と呼ばれ、最も汎用性が高いからです。「50mm(換算)を制する者は写真を制す」と言われるほど重要です。
Q2. ズームレンズがあれば単焦点はいらないのでは?
A. いえ、単焦点には「明るさ(F値)」と「画質」という絶対的なメリットがあります。
また、ズームできない不便さが逆に「足で構図を作る力」を育ててくれます。
Q3. 「35mm換算」はいつまで気にすればいいですか?
A. 異なるセンサーサイズのカメラを比較する時だけです。
ずっとAPS-C機を使い続けるなら、「このカメラでは30mmが標準」と身体で覚えてしまえば、いちいち換算する必要はありません。
Q4. 広角レンズで端にいる人の顔が伸びてしまいます。
A. 広角レンズの宿命(パースペクティブ歪み)です。
人物を撮る時は、なるべく画面の中央に配置するか、焦点距離を長く(50mm以上)してください。
Q5. 望遠レンズは遠くを撮るためだけのものですか?
A. いいえ、近くのものを「整理」するためにも使います。
圧縮効果を使って背景のごちゃごちゃを整理したり、形を歪ませずに物撮りをするのにも最適です。
Q6. iPhoneのカメラは何ミリですか?
A. メインカメラ(広角)は約24mm〜26mm相当です。
超広角は約13mm、望遠は約77mm(3倍)や120mm(5倍)相当です。
Q7. 「大三元レンズ」とは何ですか?
A. プロが使うF2.8通しのズームレンズ3本セットのことです。
・16-35mm F2.8(広角)
・24-70mm F2.8(標準)
・70-200mm F2.8(望遠)
この3本があれば、世の中の被写体の99%は撮れると言われています。
Q8. 焦点距離が長いとボケやすいのはなぜ?
A. 光学的に「倍率」が上がるからです。
難しく言えば、被写体深度は「撮影倍率の二乗に反比例」するため、大きく写す(焦点距離を長くする)ほど深度は浅くなります。
Q9. 「マクロレンズ」は焦点距離に関係ありますか?
A. 焦点距離よりも「最短撮影距離」が重要です。
ですが、虫などの逃げやすい被写体を撮るなら、離れて撮れる「望遠マクロ(90mmや105mm)」が有利です。
Q10. 風景撮影で望遠レンズは使いますか?
A. プロは多用します。
遠くの山の一部を切り取ったり、太陽を大きく写したりするのに必須です。「風景=広角」という思い込みは捨てましょう。
Q11. 焦点距離50mmは「人間の視野」と同じって本当?
A. 諸説ありますが、「注視した時の視野」に近いです。
ぼんやり見ている時の視野はもっと広い(広角寄り)ですが、何かに集中した時の感覚は50mmに近いと言われています。
Q12. ポートレートで50mmは近すぎませんか?
A. バストアップ(胸から上)なら丁度いいですが、顔のアップだと圧迫感があります。
顔のアップを撮るなら85mm以上が適しています。全身やニーアップ(膝から上)なら50mmは使いやすいです。
Q13. 「魚眼レンズ(フィッシュアイ)」は何ミリ?
A. 8mm〜15mmくらいです。
超広角レンズの一種ですが、あえて歪曲収差を残して地球儀のように歪ませる特殊なレンズです。
Q14. 焦点距離が変わると露出(明るさ)は変わりますか?
A. 理論上は変わりませんが、レンズによってはF値が変わります。
さきほど述べた「可変F値ズーム」の場合、ズームすると暗くなるので、ISO感度を上げるなどの調整が必要になります。
Q15. オールドレンズの焦点距離も同じですか?
A. はい、同じです。
50年前の50mmレンズも、最新の50mmレンズも、画角は同じです。マウントアダプターを使えば現代のカメラで使えます。
Q16. 「35mm」という数字の由来は何ですか?
A. 映画用フィルムの幅(35mm)から来ています。
かつて映画用フィルムを写真に転用した際、その規格が世界標準となり、デジタル時代になっても「フルサイズ(35mm判)」として残り続けています。
Q17. 焦点距離が長いと、手前のものが消えるって本当?
A. 「前ボケ」のことですね。本当です。
望遠レンズで絞りを開けて撮ると、レンズのすぐ近くにある金網や木々は完全にボケて消えてしまいます。
動物園の檻(おり)を消して動物だけを撮るテクニックとして有名です。
Q18. 「最短撮影距離」は焦点距離によって変わりますか?
A. 一般的に、焦点距離が長いほど最短撮影距離も長くなります。
広角レンズは数センチまで寄れますが、超望遠レンズは数メートル離れないとピントが合いません。
「大きく撮りたいのに、近すぎてピントが合わない」というジレンマは、望遠レンズあるあるです。
Q19. 自撮りに最適な焦点距離は?
A. 20mm〜24mm(換算)です。
手を伸ばした距離(約50-60cm)で顔と背景を入れるには、これくらいの広角が必要です。
ただし、顔が画面の端に来ると歪んでしまうので、なるべく自分を真ん中に入れるのがコツです。
Q20. 「パースペクティブ」と「圧縮効果」は逆の現象?
A. はい、表裏一体の関係です。
「近くを大きく、遠くを小さく」するのがパースペクティブ(広角)。
「近くも遠くも同じ大きさに」するのが圧縮効果(望遠)。
焦点距離のスライダーを動かすことは、この「遠近感のボリューム」をいじっているのと同じです。
Q21. レンズフードは焦点距離によって形が違う?
A. 全く違います。
広角レンズ用は、画角が広いため「花形(浅い)」になっています。
望遠レンズ用は、画角が狭いため「円筒形(深い)」になっています。
間違ったフードを付けると、ケラレ(画面の隅が暗くなる)の原因になります。
Q22. 動画撮影でも焦点距離の選び方は同じですか?
A. 基本は同じですが、動画では「35mm〜50mm」が好まれます。
映画的な自然な視界に近いからです。
また、広角すぎると動きによる歪みが酔いを誘発することがあるため、少し長めのレンズが安定します。
Q23. 「中一光学」などの激安レンズの焦点距離は正確?
A. 表記は正確ですが、個体差がある場合も。
ただ、焦点距離の数ミリの誤差よりも、独特のボケ味やフレアを楽しむのが中華レンズの醍醐味です。
あまり厳密に考えず、その描写(味)を楽しむのが正解です。
Q24. 焦点距離を変えると、背景の映る範囲はどう変わる?
A. 「背景整理力」が劇的に変わります。
広角だと背景がゴチャゴチャと広く写りますが、望遠にすると背景の極一部だけが切り取られて背景になります。
「背景をシンプルにしたいなら下がってズーム」は鉄則です。
Q25. 結局、一本だけ旅に持っていくなら何ミリ?
A. 究極の難問ですが、万能なのは「24-105mm」です。
しかし、写真の上達を目指すならあえて「35mm」か「50mm」の単焦点一本で行くことをお勧めします。
制約が創造性を生み、帰ってきた時に驚くような傑作が撮れていることが多いからです。
カメラ界には、メーカーを問わず絶賛される特定の焦点距離のレンズが存在します。
その代表格が「35mm F1.4」と「85mm F1.4」です。
35mmは「空気まで写る」と言われ、その場の臨場感を余すところなく伝えます。
85mmは「ポートレートの王様」と呼ばれ、とろけるようなボケ味で人物を美しく描き出します。
もし次にレンズを買うなら、この2つの焦点距離を検討してみてください。きっと世界が変わって見えるはずです。
「人間の視野に近いから50mmが標準レンズになった」
よく聞く話ですが、実はこれは後付けの理由だという説が有力です。
1914年、映画用フィルムを使って世界初の小型カメラ(ウル・ライカ)を作ったオスカー・バルナック。
彼がそのカメラに搭載したのが、たまたま手元にあった、あるいは設計がしやすかった「50mm」のレンズだったと言われています。
もし彼が40mmを選んでいたら、今の世界の標準レンズは40mmになっていたかもしれません。
実際、多くの写真家は「50mmは少し狭い(望遠寄りだ)」と感じており、本当の標準は35mm〜40mmくらいだと言う人も多いです。
「標準」という言葉に縛られず、自分の目が心地よいと感じる焦点距離を探すのが、写真を楽しむ第一歩です。
第18章:まとめ|焦点距離は「演出家」である
- 迫力を出したいなら、広角で寄る。
- 美しく整えたいなら、望遠で引く。
- 自然に伝えたいなら、標準で撮る。
この3つの「目の使い分け」ができるようになれば、あなたの写真は劇的に変わります。
今日からは、ズームリングを無意識に回すのをやめ、「どんなパースペクティブで撮りたいか?」を考えてから焦点距離を選んでみてください。
最後に、一つだけアドバイスがあります。
もしあなたが「写真がマンネリ化した」と感じたら、あえて「苦手な焦点距離」を使ってみてください。
広角が苦手なら24mm一本で、望遠が苦手なら135mm一本で一日過ごしてみてください。
強制的に視点を変えることで、今まで見えなかった新しい世界が必ず見えてくるはずです。
焦点距離という名の「目の着せ替え」を楽しんでください。

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