「子供やペットを撮ると、いつも被写体がブレてしまう」
「滝を糸のように白く流して撮りたいけれど、やり方がわからない」
写真を撮る上で「ブレ」は最大の失敗要因ですが、逆に「ブレ」をコントロールすることで、動いているものをピタッと止めたり、あるいは躍動感を表現したりすることができます。
そのカギを握るのがシャッタースピード(SS)です。
結論から言うと、シャッタースピードは「カメラの目を開けている時間」のことです。
これを自在に操れるようになると、スポーツ写真から幻想的な夜景まで、表現の幅が一気に広がります。
この記事では、シャッタースピードの基本的な仕組みから、レンズシャッターとフォーカルプレーンシャッターの構造的な違い、最新の電子シャッター事情、フリッカー現象の物理的背景、そしてプロが隠している「流し撮り」の極意まで、全角1万文字を超えるボリュームで徹底的に解説します。
第1章:シャッタースピードの正体と歴史|時間を切り取る装置

カメラの内部には、普段はセンサーを隠している「シャッター幕」というカーテンがあります。
シャッターボタンを押すと、このカーテンが一瞬だけ開き、光をセンサーに当てます。
この「カーテンが開いてから閉じるまでの時間」がシャッタースピードです。
1-1. 「1/○○秒」という表記の数学的意味
カメラの画面には「1/60」「1/1000」あるいは単に「60」「1000」と表示されています。
これは「1秒を何分割したか」を表す分数です。
- 1/1000秒:1秒の1000分の1。瞬き(約0.1秒)より遥かに速い一瞬。
- 1/2秒:0.5秒間。カメラの世界ではかなり長い時間。
- 1″(1秒):数字の横に「”」がつくと秒単位になります。
数字が大きくなる(分母が大きくなる)ほど、シャッターが開いている時間は短くなります。
これを「高速シャッター」と呼びます。
1-2. メカニカルシャッターの構造(フォーカルプレーンシャッター)
一眼レフやミラーレスカメラの多くは、「フォーカルプレーンシャッター」という方式を採用しています。
これはセンサーの前にある「先幕(さきまく)」と「後幕(あとまく)」という2枚のカーテンが走り抜けることで露光を行う仕組みです。
- 先幕が走り出して、センサーに光を当てる。
- 指定した時間が経ったら、後幕が走り出して、光を遮断する。
1/8000秒などの超高速シャッター時は、先幕が走り切る前に後幕が追いかけるため、センサー上を「細いスリット状の隙間」が移動していくことになります。全画素が同時に露光しているわけではない、という点が非常に重要です(後述するストロボ同調速度に関係します)。
1-3. 電子シャッターとグローバルシャッターの革命
近年、物理的な幕を使わない「電子シャッター」が主流になりつつあります。
これはセンサーの電源を上から順にON/OFFすることでシャッター動作を模倣するものです。
さらに2023年には、全画素を一斉に露光・読み出しできる「グローバルシャッター」を搭載したSony α9 IIIが登場しました。
これにより、物理的制約から解放され、1/80000秒という異次元のシャッタースピードが可能になりました。
第2章:レンズシャッターとフォーカルプレーンシャッター|構造の違いを知る
多くの人が使っているレンズ交換式カメラは「フォーカルプレーンシャッター」ですが、Ricoh GRシリーズやFUJIFILM X100シリーズ、そして中判デジタルカメラ(ハッセルブラッドなど)で採用されているのが「レンズシャッター(リーフシャッター)」です。
この両者の違いを知っておくと、カメラ選びや撮影手法の幅が広がります。
2-1. レンズシャッター(リーフシャッター)の特徴
レンズの中に絞りのような羽根が組み込まれており、それが開閉して露光を行う仕組みです。
フォーカルプレーンシャッターのように幕が走るわけではないため、以下の特徴があります。
- メリット:全速同調する
これが最大の強みです。シャッターが全開になる瞬間がすべての速度で存在するため、1/1000秒や1/2000秒という高速シャッターでも、ストロボ(フラッシュ)をフル発光させて同調させることができます。これにより、日中シンクロ撮影において背景を暗く落とし、被写体だけを明るく浮き立たせるといった表現が、大掛かりな機材なしで可能になります。 - メリット:静かで振動が少ない
「チッ」という小さな音しかしないため、スナップ撮影で威圧感を与えません。 - デメリット:最高速度が出にくい
物理的な羽根の開閉速度に限界があるため、1/4000秒や1/8000秒といった超高速シャッターは苦手です(多くの機種で1/2000秒程度が限界)。
2-2. フォーカルプレーンシャッターの特徴
センサーの直前に幕がある、一般的な一眼カメラの方式です。
- メリット:超高速シャッターが可能
スリット状に露光することで、機械的には1/8000秒、電子制御を加えればそれ以上の速度が容易に出せます。 - デメリット:ストロボ同調速度に限界がある
前述の通り、幕が全開になる速度(X接点=1/200秒程度)を超えると、ストロボ光が幕に遮られてしまいます。
第3章:動きを操る「時間」のコントロール術|止めるSSと流すSS
F値が「ボケ」をコントロールするのに対し、シャッタースピードは「時間(動き)」をコントロールするパラメータです。
大きく分けて2つの表現があります。
3-1. 高速シャッター(1/500秒〜):瞬間を冷凍保存する
走っている子供、ジャンプした犬、空中の水滴など、速い動きを「ピタッ」と止めて写したい場合は、高速シャッターを使います。
- 歩いている人:1/125秒以上
- 走っている子供・ペット:1/500秒以上
- スポーツ・鳥・電車:1/1000〜1/2000秒以上
- 水しぶき(スプラッシュ):1/4000秒以上
速く動く被写体ほど、より高速なシャッタースピードが必要です。
もし1/60秒などで走っている人を撮ると、手足や体がブレて幽霊のように写ってしまいます(被写体ブレ)。
3-2. 低速シャッター(1秒〜):時間の流れを表現する
逆に、あえて時間を長く切り取ることで、肉眼では見えない世界を表現することもできます。
- 滝や川の流れ:数秒間開けることで、水が糸のように滑らかに写る(シルキーウォーター)。
- 車のライト跡(光跡):ヘッドライトやテールランプが光のレーザービームのように伸びる(長秒露光)。
- 星の軌跡:数分〜数時間開けることで、星が円を描いて動く様子を写す(スタートレイル)。
これらはすべて、シャッターが開いている間に被写体が移動し、その軌跡がすべて記録されるために起こる現象です。
3-3. Sモード(Tvモード)の活用
シャッタースピードを自分でコントロールしたい場合は、モードダイヤルを「S(またはTv)」(シャッター優先オート)に合わせます。
このモードでは、あなたが「SS」を決定すると、カメラが自動的に適切なF値を決めてくれます。
「とにかくブレたくないから1/500秒固定!」といった使い方ができるため、動き回る子供やペットを撮る際に非常に有効なモードです。
第4章:手ブレと被写体ブレの物理学
「ブレ」には2種類あります。カメラが動く「手ブレ」と、相手が動く「被写体ブレ」です。
それぞれの対策は異なります。
4-1. 手ブレ限界の法則「1 / 焦点距離」秒ルール
「手持ち撮影は何秒まで耐えられる?」という疑問に対する明確な答えがあります。
それが「1 / 焦点距離」秒の法則です。
安全なSS = 1 / (レンズの焦点距離 × センサーサイズ係数) 秒
例えば、50mmのレンズをフルサイズ機で使う場合、
1 / 50 = 1/50秒 より速いシャッタースピードなら手ブレしにくいと言われています。
望遠レンズ(200mmなど)を使うと、
1 / 200 = 1/200秒 以上の速さが必要です。
望遠になればなるほど、わずかな手の震えが画角上で大きく拡大される(視点が狭くなる)ため、より速いシャッタースピードが必要になります。
4-2. 手ブレ補正(IBIS / OIS)の効果と限界
最近のカメラには「5.0段分」や「8.0段分」といった強力な手ブレ補正が搭載されています。
これは例えば「5段分」なら、本来1/60秒が必要な場面でも、5段遅い(1/2秒)まで耐えられるという意味です。
しかし、これはあくまで「あなたの手が震えても、センサーを動かして相殺する」機能であり、被写体が動いていること(被写体ブレ)は止められません。
「手ブレ補正があるからSS遅くても大丈夫」と思って子供を撮ると、背景は止まっているのに子供だけブレブレ、という失敗写真になります。
4-3. シャッターショック(機構ブレ)
一眼レフや一部のミラーレスでは、シャッター幕が「ガシャン!」と動く衝撃そのものでカメラが微細にブレることがあります。
特に1/60秒〜1/200秒付近で発生しやすい現象です。これを防ぐために「電子先幕シャッター」という機能が開発されました。
第5章:フリッカー現象と電子シャッターの弊害

便利な電子シャッターですが、大きな欠点も存在します。
5-1. フリッカー(ちらつき)の恐怖
室内の蛍光灯やLED照明の下で高速シャッター(1/500秒など)を切ると、写真に太い縞模様が入ったり、色が変わったりすることがあります。
これは照明が目に見えない速さ(東日本50Hz/西日本60Hz)で点滅しているためです。
この点滅のタイミングと、シャッター幕(または電子読み出し)のタイミングが干渉して起こります。
対策:
- フリッカーレス撮影機能をONにする:カメラが照明の点滅周期を検知し、明るいタイミングを狙ってシャッターを切ってくれます。
- シャッタースピードを同期させる:関東なら1/50秒か1/100秒、関西なら1/60秒か1/125秒に設定すると消えます。
5-2. ローリングシャッター歪み(こんにゃく現象)
電子シャッターで高速移動する物体(電車やゴルフのスイング)を撮ると、被写体が斜めに歪んで写ることがあります。
これはセンサーの上から下まで画素を読み出すのに時間がかかるため、読み出している間に被写体が動いてしまうからです。
これを解消したのが、前述の「グローバルシャッター」です。
5-3. バンディングノイズ
特定のLED照明環境下で電子シャッターを使うと、画面全体に細かい定規のような横縞ノイズが入ることがあります。
第6章:電子先幕シャッター(EFCS)の功罪
近年、多くのミラーレス一眼でデフォルト設定になっているのが「電子先幕シャッター」です。
これは、「露光開始(先幕)」だけを電子的に行い、「露光終了(後幕)」だけを物理的なメカシャッターで行うハイブリッド方式です。
メリットは絶大です。物理的な先幕が走らないので、振動(シャッターショック)がほぼゼロになり、1/100秒前後の微ブレが劇的に改善します。また、レリーズタイムラグ(押してから撮れるまでの遅延)も短縮されます。
しかし、デメリットも一つあります。それが「高速シャッター時のボケ欠け」です。
SS 1/2000秒以上の高速で、F1.4などの大口径レンズを使うと、玉ボケの上部が欠けて半円形になったり、ボケが汚くなったりする現象が起きます。
これは、電子的な先幕(センサー面)と、物理的な後幕(センサーの数ミ前)の位置がズレているために、斜めから入る光が遮られてしまうためです。
したがって、「日中のボートレートで開放絞りを使う」ときは、必ず「メカシャッター」に戻すのがプロの鉄則です。
第7章:ストロボと同調速度(X接点)の壁
スタジオ撮影やポートレートでストロボを使う場合、シャッタースピードには物理的な限界が存在します。
7-1. X-Sync(同調速度)とは
フォーカルプレーンシャッターの構造上、「画面全体が全開になる(先幕が開ききって、後幕がまだ動き出していない)」瞬間が存在する最高速度のことです。
多くのカメラでは1/200秒や1/250秒が限界です。
もし1/250秒制限のカメラで、1/1000秒でストロボを焚くとどうなるか?
写真の下半分が真っ黒になります(ケラレ)。これは、シャッター幕そのものが光を遮って影を作ってしまうからです。
7-2. ハイスピードシンクロ(HSS / FP発光)
では、昼間の屋外で背景をボカしつつ(F1.4)、ストロボを使いたい(SS 1/4000秒が必要)場合はどうすればいいのか?
ここで登場するのが「ハイスピードシンクロ(HSS)」です。
ストロボを「パン!」と一発光らせるのではなく、「パパパパパ…!」と超高速で連続発光させ、まるで定常光のように振る舞わせることで、1/8000秒でも幕切れせずに撮影できるようにする技術です。
ただし、パワー(光量)は激減するため、近距離での撮影に限られます。
第8章:長時間露光(ロング・エクスポージャー)の世界と花火撮影
1秒以上の長時間露光は、三脚が必須となりますが、肉眼を超えた芸術的な写真を撮ることができます。
8-1. NDフィルター(減光フィルター)の活用
昼間に数秒間のシャッターを開けたい場合、F値を最大(F22)まで絞っても、明るすぎて真っ白(露出オーバー)になります。
そこで、レンズのサングラスである「NDフィルター」を使います。
ND8、ND64、ND1000などがあり、数字が大きいほど濃くなります。
ND1000を使えば、真昼の海岸でも30秒露光が可能になり、波を雲海のように滑らかに表現できます。
可変NDフィルター(Variable ND)の注意点
動画撮影などで便利な「回して濃度を変えられる」可変NDフィルターですが、安価なものを使うと「X状のムラ」が出たり、色が黄色く被ったりすることがあります。静止画で長秒露光をするなら、ムラの出ない固定濃度のNDフィルター(角型フィルターなど)が推奨されます。
8-2. 花火撮影と黒紙遮光テクニック
夏の風物詩である花火。実は「バルブ(Bulb)」撮影の独壇場です。
しかし、ただ開けっ放しにすると、煙が写ったり、複数の花火が重なりすぎて真っ白になったりします。
ここで使うのが、なんとアナログな「黒い紙(または黒いうちわ)」です。
- 三脚に据え、ピントは無限遠(MF)に固定。
- バルブ設定にし、リモコンでシャッターを開く。
- レンズの前に黒い紙をかざして光を遮る(シャッターは開いたまま!)。
- 「ヒュ~」という打ち上げ音とともに、花火が開く直前に黒い紙をさっとどける。
- 花火が開いて消えるまで(約2〜5秒)露光する。
- 消えたらまた黒い紙で隠す。
これを繰り返すことで、一つの画面に複数の綺麗な花火だけを合成することができます。デジタル合成いらずの職人技です。
第9章:プロ直伝!「流し撮り(パンニング)」完全マスター講義
モータースポーツや鉄道、あるいは走る子供を躍動感たっぷりに撮るための高等テクニック、「流し撮り(Nagashi-dori)」について詳しく解説します。
9-1. なぜ流し撮りをするのか?
SS 1/1000秒で車を撮ると、車体も背景もピタリと止まり、「止まっている車」に見えてしまいます。
あえてSSを遅く(1/60秒など)し、カメラを車の動きに合わせて振ることで、背景だけを真横に流します。
「スピード感」を表現する唯一無二の手法です。
9-2. 成功率を上げるフォーム(姿勢)
流し撮りの極意は「腰」にあります。
- 足は肩幅に開き、しっかりと地面を踏ん張る。
- 脇を締め、カメラをホールドする。
- 腕だけでカメラを振らない。これ重要です。腕で振ると上下にブレます。
- 腰を回転軸にして、上半身全体で被写体を追尾します。
9-3. スイング中は「フォロースルー」を意識する
ゴルフや野球のスイングと同じです。
シャッターを切る前(被写体が見えた瞬間)から振り始め、
シャッターが切れている間(ブラックアウト中)も振り続け、
シャッターが切れた後も振り抜きます。
途中で止めると、必ずブレます。「振り抜く」ことこそが成功の鍵です。
第10章:スポーツ撮影の奥義(AF追従とブラックアウトフリー)

動きものを撮る際、シャッタースピードと同じくらい重要なのが、カメラの設定です。
10-1. 親指AFと「レリーズ優先」設定
動き回る被写体を撮るとき、シャッターボタン半押しでピントを合わせていると、ピントが合うまでシャッターが切れない「フォーカス優先」の呪縛に囚われます。
スポーツ撮影では、親指AF(AF-ONボタン)を使い、シャッターボタンからはAF機能を切り離します。
そして、設定を「レリーズ優先(ピントが合っていなくてもシャッターが切れる設定)」にします。
「ピントは親指で追い続け、撮りたい瞬間は人差し指で逃さず切る」。この役割分担が、決定的瞬間を逃さない秘訣です。
10-2. ブラックアウトフリー連写の恩恵
通常の一眼レフやミラーレスは、連写中、ファインダーが一瞬暗くなる「ブラックアウト」が発生します。
高速連写をすると、パラパラ漫画のようにコマ切れの映像しか見えないため、不規則に動く被写体(サッカー選手や野鳥)を追いかけるのが非常に困難になります。
Sony α9やα1、Nikon Z9などが採用している「ブラックアウトフリー連写」は、撮影中も映像が途切れないため、まるで動画を見ているかのように被写体を追い続けることができます。これがスポーツ写真の常識を変えました。
第11章:動画における「180度シャッターの法則」
動画撮影時のシャッタースピードは、静止画のように「ブレないように速くする」のが正解ではありません。
11-1. なぜパラパラ漫画になるのか
動画でSSを1/1000秒などにすると、1コマ1コマが鮮明すぎて、つなげて再生した時に動きがカクカクして見えます(ストロボ効果)。
人間の目は、動いているものに対して適度な「残像(モーションブラー)」を感じて滑らかさを認識しています。
11-2. 180度ルールの計算式
自然なモーションブラーを得るための黄金律が「180度ルール」です。
シャッタースピード = 1 / (フレームレート × 2)
- 24fpsで撮るなら:1/48秒(設定に近い1/50秒を使う)
- 30fpsで撮るなら:1/60秒
- 60fpsで撮るなら:1/120秒(設定に近い1/125秒を使う)
このルールを守ることで、映画のような滑らかな動きになります。
逆に、戦闘シーン(例:『プライベート・ライアン』)などで迫力を出すために、あえてこのルールを破ってSSを速く(開角90度や45度)することもあります。これにより、爆発で飛び散る土煙の一粒一粒が鮮明に見え、観客に強烈な緊張感を与えることができます。
第12章:シーン別・推奨シャッタースピード完全レシピ
| 撮影シーン | 推奨SS | ポイント |
|---|---|---|
| 手持ちスナップ/風景 | 1/60〜1/125以上 | 手ブレしない安全圏。基本の設定。 |
| 子供・ペット | 1/250〜1/500以上 | 被写体ブレ防止。室内ならISOを上げる。 |
| 運動会・スポーツ | 1/1000秒以上 | 決定的な瞬間を止めるにはこれくらい必要。 |
| 飛行機・鳥 | 1/2000秒以上 | 超高速移動体は最速レベルのSSで。 |
| 滝を流す(三脚) | 0.5秒〜2秒 | 白糸のように綺麗に流れる。NDフィルター推奨。 |
| 星空撮影(三脚) | 10秒〜20秒 | 地球の自転で星が線になる前の限界秒数(500ルール)。 |
| 花火撮影(三脚) | BULB(4〜10秒) | 打ち上げ音で開いて、消えたら閉じる。 |
| 流し撮り初級(車) | 1/60〜1/125秒 | まずはここから練習。背景が少し流れる。 |
| 流し撮り上級(レーシング) | 1/15〜1/30秒 | 背景が完全に線になるが、難易度は極めて高い。 |
第13章:シャッタースピードに関するよくある質問(FAQ)全25問
Q1. Sモードとオートモードは何が違いますか?
A. 「ブレ」への優先度が違います。
オートは「明るさ」を優先して勝手にSSを下げることがありますが、Sモードはあなたが決めたSSを死守するため、失敗(ブレ)がなくなります。
Q2. 手ブレ補正最強のカメラならSS 1秒でも手持ちできますか?
A. 理論上は可能ですが、成功率は低いです。
広角レンズで、脇を締めて、息を止めて数枚連写すれば、1枚くらいは止まっているかもしれません。しかし実用的なのは1/4秒くらいまでです。
Q3. 高速シャッターにしたら画面が暗くなりました。
A. 正常です。光が入る時間が減ったからです。
F値を開くか、ISO感度を上げて明るさを補ってください。
Q4. 「1/8000秒」なんていつ使うんですか?
A. 真夏の屋外でF1.2のレンズを使う時です。
光が強力すぎるため、SSを極限まで速くしないと白飛びしてしまうからです。
Q5. 電子シャッターはずっとONでいいですか?
A. 静止物ならOKですが、動くものや人工照明下ではNGです。
歪みや縞模様のリスクがあるため、基本はメカシャッター推奨です(α9 IIIなどを除く)。
Q6. 流し撮りがうまくできません。コツは?
A. 腰を回転軸にして、フォロースルーを意識してください。
シャッターを切る前、切っている最中、切った後まで、ずっと被写体を追い続けながら滑らかに振るのがコツです。
Q7. 星空撮影で30秒露光したら星が伸びてしまいました。
A. 地球が回っているからです。
「500ルール(500÷焦点距離=限界秒数)」を使いましょう。24mmレンズなら約20秒が限界です。
Q8. スマホでシャッタースピードは変えられますか?
A. プロモード(マニュアルモード)がある機種なら可能です。
iPhoneの場合はサードパーティ製アプリ(Lightroom Mobileなど)を使えば変更できます。
Q9. シャッター回数(耐久回数)って何ですか?
A. シャッター幕という「部品の寿命」です。
一般的にエントリー機で10万回、プロ機で40〜50万回と言われています。電子シャッターを使えば寿命は減りません。
Q10. 無音撮影(サイレントシャッター)のデメリットは?
A. 電子シャッターと同じです。
ローリング歪みやフリッカーのリスクがあります。また、撮られたことに相手が気づかないため、盗撮を疑われないよう注意が必要です。
Q11. NDフィルターは何段を買えばいいですか?
A. 最初はND16かND64あたりが汎用性が高いです。
動画用なら可変ND(ND2-400など)が便利です。
Q12. 花火撮影で黒い紙を使うのはなぜ?
A. 多重露光のような効果を出すためです。
バルブで開けっ放しにしつつ、花火が上がっていない間はレンズを黒い紙で覆って遮光し、綺麗な花火だけを一枚に焼き付ける職人技です。
Q13. レリーズケーブルは必要ですか?
A. 長秒露光なら必須です。
シャッターボタンを押す振動だけでブレてしまうからです。ない場合は「2秒セルフタイマー」で代用できます。
Q14. 飛行機のプロペラが変に曲がります。
A. ローリングシャッター現象です。
メカシャッターに切り替えてください。プロペラを円盤状にしたいならSSを1/60秒くらいまで落としてください。
Q15. 水族館で魚がブレます。
A. 暗いのでSSが落ちています。
ISO感度を3200〜6400まで上げて、SSを1/200秒以上に確保してください。
Q16. 晴天でSSを遅くして流し撮りしたいけど白飛びします。
A. F値をF16などに絞るか、NDフィルターを使ってください。
光量を落とさないと遅いSSは切れません。
Q17. シャッター速度優先AEで画面が点滅しています。
A. 露出オーバーかアンダーの警告です。
F値が限界まで開いても(または絞っても)明るさが調整しきれない状態です。ISO感度を変えて助けてあげてください。
Q18. ミラーショックとシャッターショックは違いますか?
A. 違います。
ミラーショックは一眼レフ特有の鏡が上がる衝撃。シャッターショックは幕が走る衝撃。ミラーレスにはミラーショックはありません。
Q19. 先幕と後幕、どっちが大事?
A. ストロボ撮影では「後幕シンクロ」という技法があります。
光跡が被写体の後ろに伸びるように写るため、自然な動感を表現できます。
Q20. 結局、SSは速いほうが偉いんですか?
A. 表現したいものによります。
止めるだけが写真ではありません。ブラすことでしか表現できない「風」や「時」があります。
Q21. メカシャッターと電子シャッター、寿命は関係ありますか?
A. 関係します。
メカシャッターは物理的に動く部品なので摩耗しますが、電子シャッターはセンサーのON/OFFだけなので基本的には無限です。
Q22. なぜ同調速度は1/200秒などが限界なのですか?
A. 幕が走り切る速度に物理的な限界があるからです。
これ以上速くすると、幕が画面の一部を隠してしまい、フラッシュの光が全体に届かなくなります。
Q23. 可変NDフィルターを使うと「X字」の影が出るのはなぜ?
A. 2枚の偏光膜が直交した時に起こる現象です。
安価なNDフィルターで濃度を最大付近にすると発生しやすいです。解消するには濃度を少し下げるしかありません。
Q24. 動画(120fpsのスローモーション)でもSSは180度ルールですか?
A. はい、基本はそうです。
120fpsならSSは1/240秒(1/250秒)が基準になります。スローでも自然な残像感が出ます。
Q25. ND8とND64、どちらを買うべきですか?
A. 用途によります。
動画撮影や、日中にF1.4を使いたいだけならND8〜16。滝を完全に白糸にしたいならND64〜400が必要です。
第14章:シャッタースピード関連用語集
- バルブ(Bulb)
- シャッターボタンを押している間、ずっとシャッターが開き続ける機能。Bモード。
- スローシンクロ
- 夜景と人物を両立させるために、遅いシャッタースピードで背景を取り込みつつ、人物にはストロボを当てて止める技法。
- 露光間ズーム
- シャッターが開いている数秒間の間に、ズームリングを回すこと。漫画の集中線のような効果が得られる。
- NDフィルター
- Neutral Density(中立な濃度)フィルター。色を変えずに光量だけを減らすサングラス。
- ブラックアウトフリー
- 連写中にファインダー像が消失(暗転)しないこと。α9やZ9などの積層型センサー機で実現。
- レリーズラグ(タイムラグ)
- シャッターボタンを押してから、実際にシャッターが切れるまでのごくわずかな遅延。
- 先幕と後幕(Front/Rear Curtain)
- センサーの前を走る2枚のカーテン。先幕が開いて露光開始、後幕が閉じて露光終了。
- グローバルシャッター
- 全画素を同時に露光・読み出しする方式。歪みゼロを実現する夢の技術。
- 電子先幕シャッター(EFCS)
- 先幕のみ電子的に行い、ブレを低減するモード。ボケ欠けの副作用がある。
- レンズシャッター(リーフシャッター)
- レンズ内に組み込まれた絞り状のシャッター。全速同調するのが最大の特徴。
まとめ|時間はコントロールできる
シャッタースピードは、単なるブレ防止機能ではありません。
「一瞬を永遠にする」ことも、「時間の流れを一枚に封じ込める」こともできる、写真ならではの表現手法です。
ブレは失敗とされがちですが、あえてSSを遅くして(1/15秒など)、動いている人を撮ってみてください。
背景は止まっているのに、人だけが流れて写り、「動いている感じ」が出たかっこいいスナップが撮れることがあります。
シャッタースピードを操って、目に見えない時間を写し止めてみましょう。

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