夜空を見上げて「鮮明だな」と思うだけでなく、その光景をそのまま写真に残せたら。
星空撮影(アストロフォトグラフィー)は、カメラを買った人の多くが憧れるジャンルであり、同時に最も「設定の壁」にぶつかりやすいジャンルでもあります。
「真っ暗でピントが合わない」
「星が線になってしまう」
「ザラザラのノイズだらけの写真になる」
これらの悩みは、全て「物理的な理由」があります。
星は暗く、地球は自転し、センサーには限界があるからです。
しかし、適切な機材と正しい計算式を使えば、誰でも簡単に天の川を写し撮ることができます。
本記事では、星空撮影に必要な知識を9つのステップに分解して解説します。
感覚ではなく、理屈で撮る「宇宙へのガイドブック」です。
📍 この記事で学べること
天体写真、特に星景写真や天の川撮影において、肉眼では捉えきれない微弱な光を鮮明に記録するためには、いくつかの技術要素が不可欠です。これには、星を正確な点像として記録すること、厳密なピント合わせ、そして取得したRAWデータからの情報抽出が含まれます。本記事では、これらの技術要素、特に星を点像として記録するための露光時間管理と、それに付随するカメラ設定の最適化について解説します。
地球は自転しており、その影響により天体は日周運動として観測されます。この見
1. 準備:なぜ星空撮影は「機材ゲー」なのか

写真は「弘法筆を選ばず」と言われますが、星空撮影に限っては「機材が8割」です。
暗闇の中で微弱な光を集めるには、物理的な性能(レンズの明るさとセンサーの耐性)が絶対的に必要だからです。
スマホのナイトモードも進化していますが、天の川の微細な構造や、数千個の星の粒を鮮明に描写するには、やはり一眼カメラの大きなセンサーが必要です。
まずは、最低限揃えるべき「三種の神器」について解説します。
1-1. レンズは「F2.8以下」が絶対条件
星空撮影において最も重要なのはカメラ本体ではなく「レンズ」です。
F値(絞り)が小さい、つまり「明るいレンズ」でなければ話になりません。
具体的には、F2.8以下(F1.4〜F2.8)のレンズが必要です。
F4のレンズ(標準ズームなど)では、取り込める光の量がF2.8の半分(1段分)しかありません。
その分、ISO感度を倍に上げる必要があり、写真がノイズだらけになります。
「広角」で「明るい」レンズ。これが星空撮影の入場券です。
1-2. フルサイズ vs APS-C:センサーサイズの壁
センサーサイズは大きいほど有利です。
フルサイズセンサーは、APS-Cやマイクロフォーサーズに比べて、一度に受け止められる光の量が多いため、高感度(ISO3200〜6400)でもノイズが少なくなります。
もちろんAPS-Cでも撮れますが、ISO1600あたりが限界となり、現像時のノイズ処理が難しくなります。
本気で星を撮るなら、エントリーモデルでも良いのでフルサイズ機を検討してください。
1-3. 三脚は「重さ」が正義
シャッターを15秒〜20秒も開けっ放しにするため、三脚は必須です。
ここで重要なのは「軽さ」ではなく「安定性」です。
山の上などの星空スポットは、夜風が強いことが多々あります。
カーボン製の軽量トラベル三脚では、風で微振動して星がブレてしまいます。
多少重くても、パイプ径が太く、重心が低い頑丈な三脚を選びましょう。
1-4. 「ソフトフィルター」がないと星は写らない?
実は、カメラの性能が良すぎると、星が「小さく写りすぎる」という問題が発生します。
肉眼で見るとキラキラ輝いている一等星も、写真では小さな点になってしまい、迫力が伝わりません。
そこで必須なのが「ソフトフィルター(プロソフトンなど)」です。
これをレンズに装着すると、光を滲ませて、明るい星を大きく強調してくれます。
暗い星はそのまま、明るい星だけがボワっと大きくなるため、星座の形がはっきりと分かるようになります。
「写真が上手い人の星空」がロマンチックなのは、十中八九このフィルターを使っているからです。
1-5. レリーズだけは「純正」を買うべき理由
シャッターボタンを指で押すと、その振動だけでブレてしまいます。
2秒タイマーやスマホアプリでも代用可能ですが、氷点下の暗闇でスマホ操作は地獄ですし、タイマー設定を変えるのも手間です。
物理的なケーブルレリーズ(リモートスイッチ)が最強です。
また、安物の互換品は寒さでケーブルが硬化して断線したり、接触不良を起こしたりします。
ここだけはケチらず、メーカー純正の堅牢なレリーズを買ってください。信頼性が違います。
2. ロケハン:光害(Light Pollution)から逃げろ
機材が揃っても、場所が悪ければ天の川は映りません。
日本の夜は明るすぎます。
都市の街明かり(光害)は、空中の塵に反射して空全体を白く照らし、淡い星の光をかき消してしまいます。
「肉眼で星が見える場所」と「写真で星が鮮明に撮れる場所」は別物です。
カメラは人間の目よりも光に敏感なため、わずかな街灯りも拾ってしまいます。
ここでは、本当に暗い空を見つけるための具体的な方法を解説します。
2-1. 光害マップ(Light Pollution Map)の活用
現代のフォトグラファーにとって、地図アプリよりも重要なのが「光害マップ」です。
Webサイトやアプリで「Light Pollution Map」と検索してください。
地図が色分けされて表示されます。
・赤・白エリア:都市部。惑星や明るい一等星しか撮れない。
・緑・黄色エリア:郊外。星は見えるが、地平線付近は街明かりで白くなる。
・青・黒エリア:完ぺきな暗闇。天の川が肉眼ではっきり見えるレベル。
日本国内で「青・黒」エリアを見つけるのは至難の業ですが、少なくとも「緑」エリアまでは移動する必要があります。
2-2. 月の満ち欠けと「月没」の時間
もっとも身近で強力な光害は「月」です。
満月の夜は、どんなに山奥に行っても、空全体が青白く照らされてしまい、天の川は映りません。
星空撮影のベストタイミングは「新月(Moonless Night)」の前後数日間です。
あるいは、月が出ていても「月没」後の時間帯を狙います。
「月齢カレンダー」アプリで、月の出・月の入り時刻を確認する習慣をつけましょう。
月明かりのない夜空の暗さは、恐怖を感じるほどですが、その分、宇宙の輝きは圧倒的です。
2-3. 雲の動きを読む:SCWの活用
星が見えるかどうかは「雲」次第です。
一般的な天気予報の「晴れ」マークはあてになりません。「晴れ」の定義は「雲量が8割以下」だからです。
星空撮影には「快晴(雲量0割)」が必要です。
そこで必須となるのが、スーパーコンピュータによる気象予測サイト「SCW」です。
詳細な雲の動きを1時間単位で予測できます。
「黒色(雲なし)」のエリアを探し、風向きを見て、雲が流れてこない場所をピンポイントで狙います。
2-4. 天の川の「旬」を知る:カレンダーを読む
天の川は、季節や時間によって位置が変わります。私たちがイメージする「濃い部分(銀河の中心方向)」が見える時期は限られています。
・2月〜4月:明け方の東の空に昇ってくる(横たわる天の川)。
・5月〜8月:真夜中に南の空に立ち上がる(垂直の天の川)。
・9月〜11月:日没後の南西の空に見える(沈む天の川)。
・12月〜1月:太陽と同じ方向にあるため、濃い部分は見えません(薄い冬の天の川のみ)。
一番の狙い目は、空気が澄んでいる「春の明け方」か、一晩中見えている「夏の夜」です。
冬に頑張って山に行っても、あの濃い天の川は撮れませんので注意してください。
2-5. 天気予報は「3つ」見比べるのが常識
星空撮影ガチ勢は、天気予報アプリを最低3つ使い分けます。
1. SCW(旧GPV):雲の動きを高精度で予測。基本中の基本。
2. Windy:風の強さと「霧」の発生予測に強い。雲海狙いなら必須。
3. ウェザーニュース:現地のリアルタイム実況や雨雲レーダーの補助。
一つの予報を信じて片道3時間かけて現場に行き、曇っていて絶望するのは誰もが通る道です。
複数の予報がすべて「快晴」を示した時だけ出撃する。この慎重さが勝率を上げます。
3. 設定の基礎:露出の三角形を「固定」する

星空撮影の設定は、ある程度「答え」が決まっています。
風景写真のように絞りを変えたり、ISOを変えたりすることはあまりありません。
まずは「基本の基準値」をカメラに入力し、そこから現場の状況に合わせて微調整していくスタイルが基本です。
ここでは、天の川撮影における「スタートライン」となる設定値を紹介します。
モードダイヤルは必ず「M(マニュアル)」に合わせてください。
3-1. F値は「開放」一択
迷わず「F値をもっとも小さい数字(開放)」に設定してください。
F2.8のレンズならF2.8、F1.4ならF1.4です。
通常の風景写真では、解像度を上げるためにF8〜F11まで絞りますが、星空撮影では光量が足りなさすぎるため、絞っている余裕はありません。
最近の高性能レンズは開放からシャープに写りますし、多少周辺が暗くなっても(周辺減光)、星が写らないよりはマシです。
3-2. シャッタースピードと「500ルール」
地球は自転しています。
そのため、長時間露光をしすぎると、星が動いて「線」になってしまいます。
星を「点」として止めるための限界の秒数を計算する式が「500ルール」です。
計算式: 500 ÷ (レンズの焦点距離) = 限界シャッタースピード(秒)
・14mmレンズの場合: 500 ÷ 14 = 約35秒
・20mmレンズの場合: 500 ÷ 20 = 25秒
・24mmレンズの場合: 500 ÷ 24 = 約20秒
最近の高画素機(4000万画素以上)は解像度が高く、少しのブレも目立つため、さらに厳しい「400ルール」や「300ルール」を使うこともあります。
まずは「20mm以下の広角レンズで20秒」を基準にしましょう。
3-3. ISO感度は「ノイズとのチキンレース」
F値を開放にし、シャッタースピードを20秒に固定しました。
それでもまだ写真は暗いはずです。
そこで最後に調整するのが「ISO感度」です。
ヒストグラムの山が真ん中より少し左に来る明るさになるまで、ISOを上げていきます。
一般的には「ISO3200」が基準です。
暗すぎる空なら「ISO6400」、明るい空なら「ISO1600」。
ISOを上げすぎるとノイズまみれになりますが、背に腹は代えられません。
「ノイズがあっても写っている」ことが最優先です。
3-4. JPEG禁止:「RAW」で撮らなきゃ意味がない
星空撮影大前提として、記録画質は必ず「RAW(生データ)」に設定してください。
JPEG画像はカメラ内で勝手に現像されたデータであり、星の淡い光の情報がほとんど捨てられています。
RAWデータなら、真っ暗に見える部分にも豊富な階調が残っており、後から明るく持ち上げても画質が破綻しません。
「RAW+JPEG」でも良いですが、容量を食うので、慣れてきたら「RAWのみ」で十分です。
3-5. 「長秒時ノイズ低減」はOFFにする
カメラの設定メニューに「長秒時ノイズ低減(Long Exposure NR)」という項目があります。
これは、撮影直後に同時間の「真っ黒な写真(ダークフレーム)」を撮影してノイズを引き算する機能です。
画質は良くなりますが、致命的な欠点があります。「撮影時間が2倍になる」ことです。
20秒露光したら、処理待ちでさらに20秒待たされます。
貴重な晴れ間を無駄にしないためにも、この機能は基本「OFF」にして、ノイズ処理は後からソフトで行いましょう。
4. ピント合わせ:無限遠(∞)の罠
星空撮影で最大の難関が「フォーカス(ピント合わせ)」です。
星は暗すぎて、オートフォーカス(AF)が効きません。
必ず「MF(マニュアルフォーカス)」に切り替える必要があります。
しかし、レンズの距離目盛を「∞(無限遠)」マークに合わせるだけではダメです。
気温によるレンズの伸縮や、製造誤差により、実際の無限遠はマークの位置よりも少しズレていることが多いからです。
これを「オーバーインフ(無限遠を超えて行き過ぎる状態)」と呼びます。
4-1. ライブビュー拡大法:一番明るい星を使え
確実なピント合わせの手順は以下の通りです。
1. 背面液晶(ライブビュー)を起動する。
2. 空の中で「一番明るい星(木星やシリウスなど)」を画面の中心に入れる。
3. 拡大ボタンを押して、星を最大倍率(10倍など)まで拡大表示する。
4. ピントリングを慎重に回し、星が「一番小さく、鋭く」なる点を探す。
星がボケていると、大きな円盤のように見えます。
ピントが合うにつれて円が小さくなり、芯のある輝きになります。
この「点」になった瞬間を見逃さないでください。
一度ピントが合ったら、絶対に触らないように、ピントリングをメンディングテープで固定(パーマセルテープ推奨)してしまうのがプロの技です。
4-2. 「バーティノフマスク」という技術の板
ライブビュー拡大法でもピントが合っているか不安、という人は「バーティノフマスク」を使いましょう。
これはスリットが入ったプラスチックの板です。これをレンズの前に装着して明るい星を見ると、星から「X」と「I」のような3本の光条が出ます。
ピントリングを回して、この3本の光条が一点で交わった時が「ジャスピン(Just Focus)」です。
誰でも確実に100%のピントを得られる最強のアイテムです。Amazonで数千円で買えるので、絶対に買った方がいいです。
4-3. 昼間のうちにピントを固定する裏技
暗闇でのピント合わせは難しいですが、昼間なら簡単です。
現場に明るいうちに到着し、数キロ先の鉄塔や山の頂上でAFを使ってピントを合わせ、その状態でAFを切って(MFにして)テープで固定してしまうという方法です。
ただし、気温差が激しいと夜にピント位置がズレることがあるので、撮影前には必ず最終チェックを行ってください。
5. 構図:ただの「黒い紙に塩」からの脱却
星空撮影初心者が最初に陥るのが、「空だけを撮ってしまう」ことです。満天の星空は肉眼で見ると効果的ですが、写真にすると「黒い背景に白い点が散らばっているだけ」の、いわゆる「塩を撒いたような写真」になりがちです。写真作品としてのクオリティを上げるには、地上風景(前景)との組み合わせ、すなわち「星景写真(Seascape/Landscape with Star)」を目指す必要があります。
5-1. 地上風景を「シルエット」にする
一番簡単な方法は、木や山、建物などをシルエットとして画面の下1/3に入れることです。これにより、空の広がりとスケール感が強調されます。
真っ暗な場所では、地上の物体は黒くつぶれますが、それで構いません。むしろ、黒く引き締まったシルエットがあることで、星空の明るさが際立ちます。
有名な「木」や「岩」があるスポットが人気なのは、このシルエット効果が狙えるからです。
5-2. 天の川の「位置」をアプリで予知する
天の川は、季節や時間によって位置が変わります。夏は垂直に立ち上がり、春は横に寝ています。
「Star Walk 2」や「Sun Surveyor」などのAR(拡張現実)アプリを使って、現地でスマホをかざし、天の川がどの位置から昇ってくるかを確認しましょう。
「あの山の頂上から天の川が昇る瞬間」を狙って構図を決めると、物語性のある一枚になります。
5-3. 人を入れる「セルフポートレート」
自分自身を風景の一部にするのも効果的です。ヘッドライトをつけて夜空を見上げている後ろ姿や、ランタンを持ったシルエットなどは、Instagram等のSNSで人気があります。
この場合、15秒間じっとしていなければなりませんが、人間が入ることで「宇宙と対峙する人間」というドラマが生まれ、写真の没入感が格段にアップします。
5-4. 「夏の大三角形」と「さそり座」を見つけよう
天の川だけでなく、代表的な星座を構図に取り入れると、写真に「意味」が生まれます。
夏なら、頭上の「こと座のベガ」「わし座のアルタイ」「はくちょう座のデネブ」を結ぶ「夏の大三角形」を広角レンズで捉えましょう。
また、南の空低くに赤く輝く「さそり座のアンタレス」も良いアクセントになります。
星座線が見えるような構図を作れるようになると、星空写真はもっと楽しくなります。
6. 撮影後のチェック:モニターを信じるな
暗闇で目が慣れていると、カメラの液晶モニターが明るく見えます。
そのため、モニター上で「明るくて鮮明に撮れた!」と思っても、家に帰ってパソコンで見ると「真っ暗で何も見えない」という失敗が多発します。
現場での確認は、見た目の明るさではなく「データ」で行う必要があります。
6-1. ヒストグラムの「山」を見る
再生画面で「INFO」ボタンなどを押し、ヒストグラムを表示させてください。
星空写真の場合、山が一番左(真っ黒)にくっついている「黒つぶれ」状態はNGです。
理想は、山が左から1/4〜1/3程度の位置にある状態です。
「少し明るすぎるかな?」と思うくらいで丁度いいのです。RAWデータさえ残っていれば、後で暗くすることは簡単ですが、真っ黒なデータを明るくするとノイズだらけになります。
6-2. 星を「等倍」で確認する
ピントが合っているかどうかの確認も重要です。
撮影した画像を最大倍率まで拡大し、四隅の星を見てください。
レンズの収差で多少伸びているのは仕方ないですが、中心部の星がボケて円盤状になっていないかチェックします。
気温の変化でピント位置は微妙にズレていくので、30分に1回はピントチェックを行うのが確実です。
6-3. レンズの「結露」をチェック
夜間の撮影、特に湿度が高い場所や寒暖差が激しい場所では、レンズの前玉が曇る(結露する)ことがあります。
写真全体がソフトフォーカスのようにあまくなっていたら、結露のサインです。
一度曇ると拭いてもすぐには取れません。
これを防ぐには「レンズヒーター」を巻きつけ、レンズを外気より少し温めておく必要があります。USB給電式の安価なもので十分ですので、モバイルバッテリーと共に常備しましょう。
6-4. 氷点下の戦い:予備バッテリーは体温で温める
星空撮影は真冬に行うことも多いですが、バッテリーは寒さに弱いです。
氷点下になると、満充電でも一瞬で残量が減ってしまうことがあります。
対策として、予備バッテリーは必ずポケットに入れ、体温で温めておきましょう。
カメラに入れているバッテリーが冷えて電圧が下がっても、一度温めれば復活することがあります。
カイロを貼るのは危険(熱くなりすぎる)なので、体温が一番安全です。
7. 現像:RAWデータから「宇宙」を炙り出す

星空写真は「撮って出し」では完成しません。
RAW現像によって、埋もれている星の光を強調し、カラーバランスを整える作業が必須です。
「写真というよりCG(Computer Graphics)を作る工程に近い」と感じるかもしれませんが、センサーが捉えた光情報を人間の記憶色に近づけるための正当なプロセスです。
7-1. ホワイトバランスで「色気」を作る
オートホワイトバランス(AWB)で撮ると、日本の空は光害の影響で「茶色」や「オレンジ」に写ることが多いです。
これを「3400K〜3800K(蛍光灯〜電球色)」あたりまで下げ、青みを足してください。
夜空は青い方が美しく見えます。
さらに「色被り補正」でマゼンタ(紫)を少したすと、神秘的な紫色の夜空になります。
7-2. 「かすみの除去」と「明瞭度」の技術
天の川を強調するための最強ツールが、Lightroomの「かすみの除去(Dehaze)」です。
これを+20〜+40くらい上げると、空の白っぽさが消え、天の川の暗黒帯(黒いモヤの部分)がクッキリと浮き出てきます。
さらに「明瞭度」を上げると、星の一粒一粒が輝きを増します。
ただし、やりすぎるとノイズが酷くなるので、拡大して確認しながら微調整してください。
7-3. 部分補正で「地上」と「空」を分ける
空に合わせて現像すると、地上の風景が真っ黒になりがちです。
逆に地上に合わせると、空が白飛びします。
「段階フィルター」や「空の選択」マスク機能を使い、空と地上を別々に調整しましょう。
空はコントラストを上げて星を目立たせ、地上はシャドウを持ち上げてディテールを見せる。
この一手間で、プロのような仕上がりになります。
7-4. 「AIノイズ除去」が世界を変えた
近年の写真編集における最大の革命が「AIノイズ除去」です。
Lightroomの「ノイズ除去」ボタンを押すだけで、ISO6400で撮ったザラザラの写真が、まるでISO100で撮ったかのようなツルツルの画質に生まれ変わります。
一昔前なら「高感度は使えない」と言われていましたが、今は「AIがあるから高感度も怖くない」時代です。
この機能のおかげで、APS-C機や古いフルサイズ機でも、驚くほど鮮明な星空写真が撮れるようになりました。
8. 応用とマナー:闇の中のルール
星空撮影は、自分一人だけの世界ではありません。
同じ場所で撮影している他のフォトグラファーや、近隣住民への配慮がなければ、その場所は「立ち入り禁止」になってしまいます。
長く楽しむためにも、最低限のマナーとルールを守りましょう。
8-1. ライトのマナー:赤い光を使え
暗闇に目が慣れる(暗順応)までには約30分かかります。
しかし、強力なライトの光を一瞬でも見てしまうと、リセットされてしまいます。
移動や手元の確認には、必ず「赤色LEDモード」のあるヘッドライトを使用しましょう。
赤色は目に優しく、暗順応を妨げにくいからです。
また、長時間露光中のカメラの前をライトで横切るのは厳禁です。他人の写真を台無しにしてしまいます。
8-2. 騒音とゴミ:来た時よりも美しく
星が見える場所は、静かな山間部や農村であることが多いです。
夜中の話し声や、車のドアの開閉音は、想像以上に響きます。
仲間と行く場合でも、会話は控えめに。
当然ですが、ゴミは全て持ち帰るのが鉄則です。
畑や私有地に無断で入ることも絶対にやめましょう。
8-3. 比較明合成(Stacking)へのステップアップ
今回の記事では「一枚撮り」を解説しましたが、さらに高画質を目指すなら「加算平均合成」や「比較明合成」といったテクニックがあります。
これは、同じ構図で数十枚連続撮影し、専用ソフト(Sequatorなど)で合成することで、ノイズを大幅に減らす手法です。
F値の暗いキットレンズでも、この方法ならノイズレスなすごい写真が撮れます。
まずは基本の一枚撮りをマスターし、次のステップとして挑戦してみてください。
8-4. 人工衛星(スターリンク)の写り込み
最近の星空写真で悩みの種なのが「人工衛星」です。イーロン・マスク氏のスターリンク衛星などが、写真に白い線を引いてしまうことが増えました。
残念ながら、これを避ける方法はありません。
解決策は「気にしない」か「Photoshopで消す」か「比較明合成で消す(加算平均なら消えます)」のいずれかです。
これも現代の星空写真の一部と捉え、うまく付き合っていくしかありません。
9. まとめ:宇宙はあなたのすぐ頭上に広かっている
星空撮影は「準備」と「知識」が9割の世界です。
機材をそろえ、ロケハンを行い、正しい設定を知っていれば、シャッターを押した瞬間に誰でも絶景に出会えます。
最後に、現場でパニックにならないよう、撮影の流れをチェックリストにまとめました。
- 三脚をガッチリ固定し、ストーンバッグで重りをつける
- レンズヒーターをONにする(結露防止)
- カメラの設定をMモード、F開放、SS20秒、ISO3200にする
- 一番明るい星でライブビュー拡大し、MFでピントを合わせる
- ピントリングをテープで固定する
- 試し撮りをして、ヒストグラムで露出とピントを確認する
- 構図を決めて本番撮影スタート(2秒タイマー使用)
- 光害(ひかりがい)
- 街灯や建物の光が空を照らし、星が見えなくなる現象。これを避けることが星空撮影の第一歩。
- シーイング(Seeing)
- 大気のゆらぎのこと。星がチカチカ瞬いている時はシーイングが悪く、写真に撮ると星が肥大化しやすい。
- オーバーインフ
- レンズのピントリングを無限遠(∞)以上に回せてしまうこと。これのせいで「無限遠マークに合わせればOK」が通用しない。
- ダークフレーム
- ノイズリダクション用に撮影する真っ黒な画像のこと。長秒時ノイズ低減をONにすると自動で撮影される。
特別な才能は必要ありません。必要なのは、少しの勇気を持って、暗い夜道へと足を踏み出すことだけです。
あなたのカメラには、何億光年も旅をしてきた光を捉える力があるのですから。
今度の新月の週末は、ぜひ街明かりのない場所へ出かけてみてください。

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