「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S IIは初代から何が変わった?」「35万円の価値はあるの?」——NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S IIは2025年9月発売のニコンZマウント用大三元標準ズームレンズです。クラス初のインターナルズーム機構、AF速度約5倍向上、クラス最軽量の約675gと、初代からの進化幅が大きいモデルです。この記事では、スペックの数値を分析し、初代との違いと購入価値を解説します。
・NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S IIの全スペックと初代との数値比較
・インターナルズーム・SSVCM・デクリック絞りリングなど新機能の仕組み
・風景・ポートレート・動画でのシーン別推奨設定値
・初代を持っている人が買い替えるべきかの判断基準
NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S IIの基本スペック
初代との全項目比較:何が変わり、何が変わらなかったか
NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II(以下「II」)は初代NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S(以下「初代」)から大幅な改良が加えられています。変更点と据え置き点を一覧で比較します。
| 項目 | 初代 S | II(新型) | 変化 |
|---|---|---|---|
| レンズ構成 | 15群17枚 | 10群14枚 | 3枚減(軽量化に寄与) |
| ズーム方式 | 外部ズーム(全長変化) | インターナルズーム(全長固定) | ★ クラス初 |
| AF駆動 | STM(ステッピングモーター) | SSVCM(シルキースウィフトVCM) | ★ 約5倍高速化 |
| 最短撮影距離(広角端) | 0.38m | 0.24m | ★ 14cm短縮 |
| 最大撮影倍率 | 0.22倍 | 0.32倍 | ★ 約45%向上 |
| 絞りリング | なし | あり(デクリック対応) | ★ 動画用に追加 |
| 重量 | 約805g | 約675g | ★ 130g(16%)軽量化 |
| 全長 | 約126mm | 約128.5mm(固定) | ほぼ同等(ズームで変化しない) |
| フィルター径 | 82mm | 82mm | 据え置き |
| 防塵防滴 | あり | あり(強化) | シーリング箇所増加 |
| 実売価格(2026年3月) | 約23〜26万円 | 約33〜37万円 | 約10万円の価格差 |
IIの最大の進化は「インターナルズーム」「SSVCM」「130g軽量化」「最短撮影距離の短縮」の4点です。これらはすべて実撮影に直結する改良であり、カタログスペック上の数字以上に体感の差が大きい変更です。
据え置きの項目はフィルター径82mm、開放F値F2.8一定、絞り羽根9枚(円形絞り)で、フィルターやレンズフードの買い替えは不要です。光学設計は一新されていますが、解像力は初代から大きな向上は報告されておらず、初代も十分に高い解像力を持っていたためです。
インターナルズーム:全長が変わらないことの物理的メリット
IIが採用した「インターナルズーム」は、ズーム操作時にレンズの全長が変化しない構造です。初代は24mm→70mmにズームすると全長が約20mm伸びましたが、IIは約128.5mmで固定です。
インターナルズームのメリット: ①重心位置がズーム操作で変化しないため、ジンバル(電動スタビライザー)でのバランスが崩れない→動画撮影に最適。②レンズ前面が前後しないため、PLフィルターやNDフィルターの回転角度がズームで変わらない→フィルターワークが快適。③鏡筒内への空気の出入りが少なくなり、防塵性が向上。④全長固定のため、カメラバッグ内での収まりが予測しやすい。
インターナルズームは動画撮影で特に恩恵が大きい設計です。ジンバルに載せた状態でズームしても重心が移動しないため、バランスの再調整が不要です。初代では70mm端でレンズが伸びてジンバルのバランスが崩れる問題がありましたが、IIではこの問題が完全に解消されています。
SSVCM:AF速度約5倍の駆動システム
IIのAF駆動には「シルキースウィフトVCM(SSVCM)」が採用されています。SSVCMはVCM(Voice Coil Motor)をベースにニコンが独自開発した次世代AFモーターで、ズームレンズとしては初搭載です。
VCMとSTMの違い: STM(ステッピングモーター)は電気パルスで一定角度ずつ回転するモーターで、精度は高いが速度に限界があります。VCM(ボイスコイルモーター)はコイルに電流を流して磁場内で直線運動するモーターで、回転→直線変換のロスがなく高速動作が可能です。SSVCMはこのVCMの制御精度をさらに高めた発展型で、初代STM比で約5倍のAF速度と約60%向上したAF追従性を実現しています。
AF速度の約5倍向上は、特にAF-C(コンティニュアスAF)での被写体追従に効果があります。被写体が急に移動した場合の「ピントの復帰速度」が格段に速くなり、Z8やZ9の高速連写(20コマ/秒以上)と組み合わせた際のピント的中率が向上します。ズーム中のAF追従性能も約60%向上しており、ズームしながらAFが被写体を追い続ける「ズーム追従AF」が実用的になりました。
シーン別の推奨設定値と活用法
風景撮影:F8〜F11のスウィートスポットとISO64の組み合わせ
24-70mm F2.8の大三元レンズは、風景撮影で「広角24mm〜中望遠70mm」の画角をF2.8一定で使える万能性が最大の利点です。IIではインターナルズーム化によりフィルターワークが快適になり、風景撮影での使い勝手がさらに向上しました。
| シーン | 焦点距離 | F値 | SS | ISO |
|---|---|---|---|---|
| 風景(パンフォーカス) | 24〜35mm | F8〜F11 | 1/60〜1/250 | 64〜100 |
| ポートレート(バストアップ) | 50〜70mm | F2.8〜F4 | 1/250〜1/500 | 100〜400 |
| テーブルフォト(寄り) | 24mm(最短24cm) | F4〜F5.6 | 1/60〜1/125 | 200〜800 |
| スナップ(街歩き) | 35〜50mm | F4〜F5.6 | 1/250〜1/500 | Auto(上限6400) |
| 動画(ジンバル) | 24〜70mm | F2.8〜F5.6 | 1/50(24fps) | Auto |
風景撮影ではF8〜F11が解像力のスウィートスポットです。24mm端のF8でMTF 30本/mmが画面中心で0.8以上、周辺でも0.6以上という高い解像力を維持します。PLフィルター(82mm径)やNDフィルターはインターナルズームのおかげでズーム操作でもフィルターの回転角度が変わらず、初代よりフィルターワークが快適です。
ポートレート・テーブルフォト:F2.8のボケと最短24cmの寄り
IIの最短撮影距離は24mm端で0.24m(24cm)、最大撮影倍率は0.32倍です。初代の0.38m(38cm)・0.22倍から大幅に改善されており、テーブルフォトや小物撮影での「寄れる」性能が向上しました。
・24mm端 0.24m: レンズ前面から被写体まで約10cm。料理の一皿をフレームいっぱいに撮影可能
・最大撮影倍率 0.32倍: フルサイズで約11×7.5cmの範囲が画面いっぱいに。花1輪のクローズアップや小物撮影に対応
・初代(0.38m・0.22倍)との差: 被写体に14cm近づけるようになり、同じ焦点距離で約45%大きく写せる
ポートレート撮影では70mm端でF2.8開放がバストアップ〜ウエストアップの定番設定です。フルサイズのF2.8は背景が十分にぼけ、被写体を際立たせます。70mm・F2.8・被写体距離1.5mの条件では被写界深度が約3.5cmで、瞳にピントを合わせると耳はぼけ始める浅さです。
動画撮影:デクリック絞りリングとインターナルズームの恩恵
IIは動画撮影への対応が大幅に強化されています。ニコンZマウントレンズとして初の「デクリック対応絞りリング」が搭載され、絞りリングのクリック(段階感)をオフにして無段階で滑らかに絞りを変更できます。
デクリック絞りリング: 通常の絞りリングは1段(または1/3段)ごとに「カチカチ」とクリック感があり、静止画撮影では設定値を正確に保てる利点があります。動画撮影では、このクリック感があると絞りの変更時に映像がガクッと明るさが変わります。デクリック(クリック解除)にすると無段階に滑らかに絞りが変化し、映像の明るさ変化をスムーズに(トランジション的に)演出できます。
インターナルズームとの組み合わせにより、ジンバル撮影でのズーム操作、絞り変更、AF追従のすべてが安定して行えます。24fps撮影時のシャッタースピードは1/50秒(180°ルール)が基本で、日中屋外ではF8〜F16に絞るか、NDフィルター(ND8〜ND64)でSSを抑えます。
初代からの買い替えは必要か|判断基準3つ
買い替え推奨のケースと見送りのケース
初代NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sを所有している場合、IIへの買い替えが合理的かどうかは使用目的で判断します。
| 使用状況 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 動画撮影が多い(ジンバル使用) | ★ 買い替え推奨 | インターナルズーム+デクリックが不可欠 |
| 動体撮影が多い(スポーツ・子供) | ★ 買い替え推奨 | AF速度5倍+追従60%向上は体感差大 |
| テーブルフォト・物撮りが多い | ○ 買い替え検討 | 最短24cm・0.32倍は利便性向上 |
| 風景・三脚中心の静止画 | △ 見送り可 | 解像力は同等。AF速度の恩恵が少ない |
| 予算に余裕がない | ✕ 見送り | 初代は十分な性能。差額10万円を他に投資 |
初代の中古価格は約18〜22万円で、IIとの実売価格差は約10〜15万円です。初代を売却してIIに買い替えると実質15〜20万円の追加出費になります。この金額で得られる最大のメリットは「AF速度5倍」「インターナルズーム」「130g軽量化」の3点です。
初代の解像力は依然として現役水準です。IIの主な進化はAF・ズーム機構・動画機能であり、静止画の画質(解像力・ボケ味・色収差)に関しては初代からの差はわずかです。風景・ポートレートの静止画が中心で、AF速度に不満がないなら初代を使い続けて問題ありません。差額の10〜15万円を他のレンズ(14-24mm f/2.8や70-200mm f/2.8)に投資する方が撮影の幅は広がります。
新規購入なら初代と II のどちらを選ぶべきか
大三元標準ズームを新規購入する場合、初代(中古約18〜22万円)とII(新品約33〜37万円)のどちらを選ぶかは予算と用途で決まります。
IIを選ぶべきケースは、動画撮影を行う場合(インターナルズーム+デクリック絞り)、Z8/Z9で高速連写を使う場合(SSVCM AF)、テーブルフォトで寄る必要がある場合(最短24cm)の3つです。予算が35万円以上ある場合はIIが最新技術の全部入りであり、長期的にはIIの方がリセールバリュー(将来の売却価格)も高くなります。
初代を選ぶべきケースは、予算を25万円以内に抑えたい場合、静止画中心で動画を撮らない場合、差額でレンズを追加購入したい場合です。初代の解像力とF2.8の描写力は依然としてトップクラスであり、「安くなった初代を買って差額で70-200mmを揃える」という戦略は合理的です。
まとめ|NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S IIの評価と推奨設定
IIの5つの進化ポイントと推奨設定
NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S IIの進化を5点に集約し、推奨設定とともに整理します。
- 進化①: インターナルズーム → 全長固定128.5mm。ジンバル撮影・フィルターワーク・防塵性が向上
- 進化②: SSVCM AF → 初代比約5倍の速度。Z8/Z9の高速連写でのピント的中率が大幅向上
- 進化③: 最短撮影距離24cm → 初代38cmから14cm短縮。テーブルフォト・物撮りの自由度が拡大
- 進化④: 約675g → 初代805gから130g(16%)軽量化。終日の撮影旅行での疲労軽減
- 進化⑤: デクリック絞りリング → 動画撮影での滑らかな露出変更が可能
・風景: F8〜F11・ISO64(Z8/Z5II使用時)・三脚・RAW 14bit
・ポートレート: 70mm・F2.8〜F4・AF-C・瞳AF ON・SS 1/250秒以上
・テーブルフォト: 24mm・最短24cm・F4〜F5.6で被写体全体にピント
・スナップ: 35〜50mm・F4〜F5.6・ISO Auto・AF-C
・動画: デクリック ON・F2.8〜F5.6・SS 1/50(24fps)・ND併用
NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S IIは「1本で風景からポートレート、動画まで対応するオールラウンダー」です。約35万円の投資は決して安くありませんが、この1本があればレンズ交換なしで大半の撮影シーンに対応でき、撮影の機動力と画質を高い次元で両立できます。

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