「友達を撮ってあげたけど、実物より太って見えてしまった」
「プロみたいなキラキラした写真が撮りたいのに、証明写真みたいになる」
「モデルさんにどう声をかければいいか分からない」
人物撮影(ポートレート)は、カメラの中で最も奥が深く、そして最も楽しいジャンルです。
風景と違って、被写体と会話しながら一緒に作品を作り上げる喜びがあります。
しかし、撮り方を間違えると、相手を不快にさせたり、コンプレックスを強調してしまったりする恐れもあります。
この記事では、プロのポートレートフォトグラファーが実践している「モデルを最高に輝かせるテクニック」を全公開します。
高い機材は必要ありません。
「光の読み方」を知るだけで、あなたの写真は劇的に変わります。
この記事でわかること
- 結論:ポートレートの9割は「光」と「コミュニケーション」で決まる
- 機材:85mmか50mmの単焦点レンズを用意せよ
- 極意:瞳AFを信じて、会話に集中すること
魔法1.光を制する者がポートレートを制する

ポートレートにおいて、カメラの設定よりも大切なのが「光」です。
一番やってはいけないのは、モデルを直射日光の下に立たせて、真正面から撮ることです。
影が強く出て、シワも目立ち、眩しくて目が細くなってしまいます。
極意:半逆光(Backlight)を探せ
モデルの斜め後ろから太陽が当たっている状態(半逆光)がベストポジションです。
- 髪の毛が輝く:光が髪を透かして、天使の輪のようなリムライト(輪郭光)が生まれます。
- 顔が柔らかくなる:顔は日陰になるため、直射日光の強い影が出ず、肌が滑らかに写ります。
- キャッチライトが入る:空の光や、地面からの照り返しが目に入り、瞳がキラキラします。
窓際こそが最強のスタジオ
室内で撮るなら、レースのカーテン越しの窓際が最強です。
カーテンがディフューザー(拡散板)の役割を果たし、柔らかくて美しい光がモデルを包み込みます。
有料のスタジオを借りなくても、自宅の窓際だけでプロ級の写真は撮れます。
基本のライティングパターン|レンブラントとバタフライ
光の当て方には名前があります。
これを知っていると、意図的に「かっこいい顔」「可愛い顔」を作り分けられます。
1. レンブラントライト(Rembrandt Lighting)
画家のレンブラントが愛用した光です。
顔の影になる側の頬に、小さな三角形の光(トライアングル)を作るのが特徴です。
効果:彫りが深く見え、ドラマチックで男性的な印象になります。
作り方:窓に対してモデルを斜め45度に立たせ、少し顔をカメラに向けてもらいます。
2. バタフライライト(Butterfly Lighting)
鼻の下に蝶のような形の影ができることから名付けられました(パラマウントライトとも呼びます)。
効果:頬骨が高く見え、顔が細く見えます。ハリウッド女優のような華やかさが出ます。
作り方:正面の少し高い位置から光を当てます。
時間帯の魔法|ゴールデンアワーとブルーアワー
プロが「良い写真」を撮れる最大の秘密。それはカメラの性能ではなく「撮る時間帯」を選んでいるからです。
真昼の太陽(正午)は、頭の真上から光が降り注ぐため、目の下に濃い影(ガイコツ影)ができやすく、ポートレートには最悪の時間帯です。
ゴールデンアワー(日の出直後・日没直前)
太陽が地平線に近い時間帯です。
光が金色に輝き、影が長く伸びます。
この光は非常に柔らかく、肌をきれいに見せ、髪の毛を輝かせる逆光撮影に最適です。
「エモい」写真を撮りたいなら、この1時間を絶対に逃してはいけません。
ブルーアワー(日没後の数十分)
太陽が沈んでから、空が真っ暗になるまでの短い時間。
空が深い青色に染まります。
都会のポートレートなら、街灯やビルの明かりが点き始めるこの時間がベストです。
背景のイルミネーションと、人物の顔の明るさのバランスが取りやすい魔法の時間です。
夜のポートレート|ストロボとスローシンクロ
日が完全に沈んだ後は、街明かり(イルミネーション)を背景に撮るチャンスです。
しかし、そのまま撮ると「背景は綺麗だけど顔が真っ暗」か「顔は明るいけど背景が真っ白」になりがちです。
クリップオンストロボの活用
カメラの上に付けるフラッシュを使います。
ただし、直接顔に当てると「能面」のようにのっぺりしてしまいます。
テクニック:スローシンクロ(Slow Sync)
シャッタースピードを遅くして(1/30秒など)背景の明かりを取り込みつつ、一瞬だけフラッシュを光らせて人物を止めます。
これにより、「キラキラの夜景」と「明るい人物」が同居した幻想的な写真になります。
0円でできるライティング|レフ板の魔術
「逆光で撮ると顔が暗くなる」という問題。
これを解決するのが「レフ板(Reflector)」です。
白いノートで代用可能
Amazonで買わなくても、白いスケッチブックや、着ている白いTシャツでも代用できます。
モデルの顔の下(胸元あたり)に白いものを置くだけで、光が反射して顔の影(特に顎の下や目の下のクマ)を消してくれます。
これを「キャッチライトを入れる」とも言います。
瞳の中に白い輝きが入るだけで、表情がいきいきとして見えます。
100円ショップの白いカラーボードでも十分な効果があります。
小道具(プロップス)を使って世界観を作る
ポートレートは「顔だけ」を撮るものではありません。
小道具を使うと、手持ち無沙汰なモデルの緊張がほぐれ、写真に物語が生まれます。
1. プリズム・ガラス玉
レンズの前にガラスの破片やプリズムをかざします。
光が乱反射して、虹色のボケや幻想的な光(フレア)を意図的に作り出せます。
1000円くらいで買える最強の「エモい」アイテムです。
2. 花・植物
花を持つだけで、女性の表情は柔らかくなります。
また、前ボケとしてレンズのすぐ近くに花を配置すると、画面全体が華やかになります。
3. 透明傘(ビニール傘)
雨の日にこそ使えます。
水滴がついたビニール傘越しにストロボを焚くと、光が拡散して美しいソフトボックスのような効果が生まれます。
魔法2.レンズ選びで「小顔」を作る

「スマホで撮ると顔が歪む」
これはスマホのレンズが広角すぎるからです。
ポートレートには適切な焦点距離があります。
85mm(中望遠)|ポートレートの王様
プロが最も愛用するレンズです。
- 歪みがない:遠近感が圧縮されるため、顔の形が歪まず、端正に写ります。
- 背景整理:画角が狭いので、背景の余計な看板や電柱をカットしやすいです。
- 距離感:モデルと2〜3メートル離れることになります。この「近すぎず遠すぎず」の距離が、モデルに圧迫感を与えず、リラックスして話せる距離なのです。
50mm(標準)|親近感の距離
テーブルの向かいに座っているような、親しい距離感で撮れます。
カフェやデート中のスナップなら50mm、作品撮りなら85mmというのが一つの目安です。
35mm(準広角)|背景も入れる
「海に来た!」「花畑に来た!」という状況を一緒に写したいなら35mmです。
ただし、寄りすぎると顔が歪むので、全身やバストアップ(胸から上)で撮るのがコツです。
魔法3.絞り(F値)の正解は?
「ポートレート=背景ボケ」というイメージがありますが、ボカしすぎも考えものです。
F1.8〜F2.8|とろけるボケ
基本はここを使います。
背景を溶かすことで、モデルだけを浮き上がらせます。
特に背景が「木漏れ日」や「イルミネーション」の場合、丸ボケがキラキラして幻想的になります。
F1.2〜F1.4|異次元の立体感
高級レンズの世界です。
まつ毛にピントが合っているのに、耳はもうボケているという薄さです。
ハマれば魔法のような写真になりますが、ピント合わせがシビアすぎます。
カメラの瞳AF性能が試されます。
F4〜F5.6|しっかり見せる
旅先で「金閣寺と一緒に撮る」といった場合、F1.8だと金閣寺がボケて何だか分からなくなります。
背景もしっかり見せたい記念写真なら、F5.6くらいまで絞りましょう。
モデルを細く見せる「ポージング」の法則
「棒立ち」はNGです。
人間の体は、正面から見ると一番太く見えます。
少し角度をつけるだけで、驚くほどスタイルが良く見えます。
法則1:体にひねりを加える(S字ライン)
体を少し斜めに向け、顔だけカメラの方を向いてもらいます。
さらに片足に体重をかけ、もう片方の足を少し前に出すと、体全体に「S字」の曲線が生まれます。
これが女性らしさと細見え効果を生みます。
法則2:三角形(トライアングル)を作る
腕と体、足と地面の間などに「隙間(三角形)」を作ります。
例えば、手を腰に当てたり、髪を触ったりして肘を曲げると、空間が生まれて軽やかな印象になります。
体に腕を密着させると、二の腕が潰れて太く見えるので、「脇を少し開けて」とアドバイスしましょう。
法則3:手は顔の近くに
「虫歯ポーズ」のように手を頬に添えたり、顎の下に置いたりすると、顔の面積が隠れて小顔効果があります。
また、視線が手に誘導されるので、自然と顔に注目が集まります。
男性ポートレートのポージング(カッコよく撮る)
女性とは逆に、男性は「直線」と「脱力」を意識します。
1. 重心を後ろにかける
両足で仁王立ちすると、証明写真になります。
壁や手すりに寄りかかり、片足に体重を乗せると、自然なラフさが出ます。
2. 手の居場所を作る(ポケット)
男性は手の置き場に困りがちです。
ズボンのポケットに手を入れましょう。
ポイントは「親指だけ外に出す」こと。
全部入れると自信なさげに見えますが、親指を出すと「自信」と「男らしさ」が出ます。
3. 腕組みのテコ入れ
腕を組む時は、下の腕で上の腕の力こぶ(二の腕)を少し押し上げます。
これにより、腕が太く逞しく見えます。
静止画に「動き」を加える
止まっている写真こそ、動き(モーション)が必要です。
「はいチーズ」で静止してもらうのではなく、動いている瞬間を連写で狙います。
1. 振り返り美人
後ろを向いて歩いてもらい、「おーい」と声をかけて振り返った瞬間。
髪の毛がふわりと舞い、表情も作られていない自然な笑顔になります。
2. ウォーキング
こちらに向かって歩いてきてもらいます。
服の裾が揺れ、躍動感が出ます。
AFモードを「コンティニュアスAF(AF-C)」にするのを忘れずに。
カップル・夫婦の撮り方
「二人で並んでピース」からの脱却を目指しましょう。
1. 見つめ合う
カメラを見てもらうと、どうしても「記念撮影感」が出ます。
「お互いの目を見て」と言うだけで、二人の世界観が生まれ、自然な笑顔がこぼれます。
2. 内緒話ポーズ
彼女が彼氏の耳元で何か囁くようなポーズ。
二人の距離が物理的に縮まり、親密度が写真に写ります。
3. 身長差を活かす
身長差がある場合、彼氏が後ろからハグしたり、段差を使ったりして顔の高さを揃えるのが鉄板です。
逆に、身長差を強調して「見上げる・見下ろす」構図も可愛らしさが出ます。
子供・赤ちゃんの可愛さを爆発させるコツ
子供は「小さな怪獣」です。
言うことを聞きませんし、じっとしていません。
大人と同じ撮り方では失敗します。
1. 伝説の「アイレベル」
立ったまま見下ろして撮ると、頭でっかちの普通の写真になります。
必ず膝をつくか、地面に這いつくばって、子供の目線と同じ高さ(アイレベル)で撮ってください。
世界が変わり、子供と同じ景色が見えてきます。
2. シャッタースピードは1/500秒以上
子供の動きは予測不能です。
室内でもISO感度を上げて(ISO1600〜3200)、シャッタースピードを稼いでください。
ブレて失敗するより、多少ノイズがあっても止まっている写真の方が価値があります。
3. 連写モード(ドライブモード)H+
「最高速」の連写設定にします。
100枚撮って、その中の奇跡の1枚(最高に笑っている瞬間)を選ぶのです。
デジタルカメラだからこそできる贅沢な戦法です。
難易度MAX!集合写真(グループポートレート)の極意
3人以上のグループを撮る時、ただ横一列に並ばせていませんか?
それは「記念撮影」であって「ポートレート」ではありません。
顔の高さを変える(三角形の法則)
全員の顔が同じ高さにあると、平面的で面白みがありません。
・1人は座る
・1人は立つ
・1人は中腰
このように顔の位置を結んだ線が「三角形」になるように配置すると、リズムが生まれ、雑誌の表紙のような構図になります。
服装とロケーションの色の関係
「何を着ていけばいい?」と聞かれたら、こう答えましょう。
「無地で、明るい色の服がいいよ」
なぜ無地なのか?
ボーダーや大きなロゴ、複雑な柄の服は、視線がそっちに行ってしまうからです。
主役はあくまで「顔」です。
服は引き立て役に徹する必要があります。
色の選び方(補色と類似色)
- 新緑(緑)の中で撮るなら:補色(反対色)である「ピンク」や「赤」の服を着ると、人物が強烈に浮き上がります。
- 海(青)で撮るなら:類似色である「水色」や「白」を着ると、清涼感のある爽やかなイメージになります。
- 秋の紅葉(赤・茶)なら:「ベージュ」や「クリーム色」で暖かみを統一するのがおしゃれです。
ロケーション選びのコツ|「背景」が8割
モデルがいくら良くても、背景が雑だと台無しです。
プロは撮影前に必ず「ロケハン」をします。
1. テクスチャ(質感)を探す
レンガの壁、錆びた鉄扉、蔦の絡まるでフェンス。
こういった「ザラザラした背景」の前に、肌の綺麗なモデルが立つと、対比効果で肌がより滑らかに見えます。
2. 奥行き(抜け)を探す
後ろが壁だと、圧迫感があります。
並木道や、長い廊下など、奥へと続くライン(消失点)がある場所を選びましょう。
そこにモデルを立たせると、視線が自然と奥へ誘導され、ドラマチックな構図になります。
魔法4.構図とアングルの心理学

「ただ立って撮る」だけでは芸がありません。
アングルを変えるだけで、モデルの印象を操作できます。
上から撮る(ハイアングル)
効果:可愛らしさ、小顔、上目遣い
カメラを相手より高い位置に構えます。
モデルは上を見上げるので目が大きく開き、顎が引かれて小顔に見えます。
アイドルの自撮りが斜め上からなのはこのためです。
下から撮る(ローアングル)
効果:足長、スタイルアップ、威厳
腰の位置から撮るだけで、足が長く見えます。
全身を撮るなら、カメラマンは迷わずしゃがんでください。
ただし、下からあおりすぎると鼻の穴が見えてしまうので注意が必要です。
三分割構図の「目」
画面の交点に、モデルの「手前の目(カメラに近い方の目)」を配置します。
ここがピントの芯であり、写真の魂が宿る場所です。
日の丸構図も悪くありませんが、視線の先に空間(余白)を作ると、物語性が生まれます。
視線の抜け(ルッキング・スペース)
「視線の法則」とも呼ばれます。
モデルが右を向いているなら、画面の右側に余白を作ります。
逆に、視線の先が壁(画面の端)だと、窮屈で閉塞感のある心理的効果が生まれます。
「未来」や「希望」を表現したいなら、視線の先に広い空間を空けましょう。
魔法5.最強の武器「声かけ(コミュニケーション)」
これが最も重要で、最も難しい技術です。
モデルは緊張しています。
「はい笑って〜」と言われて自然に笑えるのはプロのモデルだけです。
一般の人を撮る時は、カメラマンがエンターテイナーになる必要があります。
「え、今の表情すごくいい!天才かも!」(とにかく褒める)
「あっちの看板見てみて〜」(視線を外させる)
「今日何食べた?」(日常会話で緊張をほぐす)
「髪かきあげてみて」(具体的な動作を指示する)
「もっと自然に笑って」(無理です)
「あー、なんか違うな…」(それを言ったら終わりです)
「(無言でシャッターを切る)」(モデルは不安で死にそうになります)
シャッター音は「対話」です。
「いいよ!」「最高!」「可愛い!」と声を出しながら(あるいは心で叫びながら)撮りましょう。
カメラマンのテンションが低いと、絶対良い写真は撮れません。
心理学を使ったラポール(信頼関係)の形成
プロは撮影前に「ラポール(架け橋)」を作ります。
いきなりレンズを向けるのは失礼です。
最初の5分はカメラを置いて、雑談をしましょう。
ミラーリング効果
相手の動作を真似することです。
モデルが足を組んだら自分も組む、モデルが飲み物を飲んだら自分も飲む。
無意識に「この人は自分と似ている=味方だ」と感じさせる心理テクニックです。
音楽の力を借りる
無音の空間は緊張を生みます。
スマホでモデルの好きな曲(事前に聞いておく)を流しましょう。
リズムに乗れば、ポージングも自然と滑らかになります。
やってはいけない!ポートレートのNG集
せっかくの笑顔も、これが起きていると台無しです。
1. 串刺し・首切り
背景の木や柱が頭から生えていないか、地平線が首を切断していないか。
ファインダーを覗く時、モデルの顔だけでなく「背景の線」にも注意を払ってください。
2. まだらな影
木漏れ日の下などで、顔の一部だけに強い日が当たって「まだら模様」になっている状態。
これはレタッチでも直せません。
均一な日陰に移動するか、日向に出るか、どちらかにしましょう。
3. ピントが鼻や耳
F1.8などの浅い深度では、鼻の頭にピントが合って、肝心の目がボケてしまうことがあります。
必ず「瞳AF(Eye AF)」機能をオンにしてください。
最新のカメラ(Sony, Canon, Nikon)なら、自動でガチピンで瞳を追い続けてくれます。
レンズ別・描写比較テーブル
焦点距離ごとの特徴をまとめました。
| 焦点距離 | 特徴・効果 | おすすめシーン |
|---|---|---|
| 24mm〜35mm (広角) |
・遠近感が出る(小顔効果なし) ・足が長く見える(ローアングル) ・背景が広く写る |
ダイナミックな全身写真 旅行スナップ |
| 50mm (標準) |
・見た目に近い自然な距離感 ・扱いやすい |
カフェ、散歩 バストアップ |
| 85mm〜135mm (中望遠) |
・歪みがない(小顔・美肌) ・背景が整理される ・ボケが大きい |
ガチのポートレート 屋外でのウェディング |
| 200mm〜 (超望遠) |
・強烈な圧縮効果 ・背景がすぐ後ろにあるように見える |
遠くからの盗み撮り風 (ドラマチックな演出) |
肌を美しくする|レタッチ(編集)の基本
撮って出し(JPEG)も良いですが、ポートレートは「現像」で完成します。
特に肌の処理は、モデルへの最大のマナーです。
周波数分離(Frequency Separation)の概念
プロのレタッチャーが使う技術ですが、考え方はシンプルです。
画像を「色(低周波)」と「質感(高周波)」のレイヤーに分けます。
・色レイヤー:肌の赤みや色ムラを直す(ボカしてもOK)
・質感レイヤー:ニキビや毛穴を消す(色は変わらない)
これを別々に処理することで、「肌の質感(キメ)は残しつつ、陶器のような滑らかな肌」を作ることができます。
「肌をのっぺりさせない」のがプロのレタッチです。
ドッジ&バーン(Dodge & Burn)
明るくする(Dodge)と暗くする(Burn)ブラシを使って、顔に立体感を描き足す手法です。
鼻筋や頬骨の一番高いところにハイライトを入れ、フェイスラインにシャドウを入れる。
メイクの「ハイライト&シェーディング」と全く同じことを、PC上で行うのです。
スマホで完結!おすすめレタッチアプリ
PCを持っていない人は、スマホアプリでも十分なクオリティが出せます。
- Lightroom Mobile(ライトルーム):プロ御用達。部分補正や色調整が最強です。無料版でも十分使えます。
- VSCO(ヴィスコ):フィルム風のフィルターが豊富。タップ一発でお洒落な色になります。
- Snapseed(スナップシード):Google製の無料アプリ。「シミ除去」機能が優秀で、肌のトラブルを消すのに便利です。
- Snow / Ulike:盛りすぎ注意ですが、「肌磨き」や「輪郭補正」をナチュラルにかけるなら選択肢に入ります。
色の魔法|フィルムルックとカラーグレーディング
写真の印象を決定づけるのが「色味(カラー)」です。
最近のトレンドは、あえてフィルムのように色を転ばせるスタイルです。
ティール&オレンジ(Teal & Orange)
映画でよく使われる配色です。
・シャドウ(暗部)を青緑(ティール)にする
・ハイライト(肌色)をオレンジにする
人間の肌を強調しつつ、背景をクールに沈めることで、被写体が浮き上がって見えます。
モノクローム(白黒)の使い時
「色が邪魔」な時に使います。
例えば、背景の看板の色がうるさい時や、モデルの表情(シワや涙)そのものに注目させたい時。
色は情報を与えますが、モノクロは感情を伝えます。
「遺影みたい」と言われないように、コントラストを強めにして、黒をしっかり締めるのがコツです。
自分自身を撮る|セルフポートレートの世界
「撮ってくれる人がいない」なら、自分で撮ればいいのです。
三脚とタイマーを使えば、誰にも気兼ねなく、納得いくまで自分の表現を追求できます。
Wi-Fiリモート撮影
最近のカメラはスマホと連動します。
スマホの画面で自分のポーズを確認しながらシャッターを切れます。
誰にも見られないので、恥ずかしいポーズも練習し放題です。
これが最大の「ポージング練習」になります。
よくあるトラブル解決集(FAQ)

Q. メガネの反射が消えない!
A. メガネの角度を少しずらしてもらう
メガネのつる(耳にかける部分)を少し持ち上げてもらい、レンズを少し下向きに傾けてもらいます。
これだけで、正面からのストロボや空の反射が劇的に減ります。
(※もちろん、「アゴを引いて」と言うだけでも効果があります)
最終手段としては、「レンズなしの伊達メガネ」を用意しておくのがプロの裏技です。
Q. 二重あごが気になる…
A. 「亀の首」ポーズ
「顔を少し前に出して(亀のように)」と指示します。
横から見ると少し変な姿勢ですが、正面から撮るとデコルテが伸びて、二重あごが消滅し、フェイスラインがシャープになります。
Q. 風が強くて髪が乱れる
A. それを活かす!
風上の方向を向いてもらい、髪を後ろになびかせましょう。
「風を浴びているCMのような演出」にしてしまえば、乱れ髪もプラスの要素になります。
写真を「紙」に印刷してみよう
スマホの画面で見るだけで終わっていませんか?
ポートレートの本当の美しさは、プリントして初めて分かります。
特に「絹目(シルク)」や「マット紙」に印刷すると、肌の質感が驚くほど繊細に表現されます。
A4サイズにプリントして額装し、モデルにプレゼントしてみてください。
一生の宝物として喜ばれるはずです。
歴史に学ぶ|真似すべき巨匠たち
良い写真を撮る近道は、良い写真をたくさん見ることです。
1. Annie Leibovitz(アニー・リーボヴィッツ)
「VOGUE」などで活躍する世界一有名な写真家。
彼女のライティングは非常に絵画的で、環境と人物を調和させる「エンバイロンメンタル・ポートレート」のお手本です。
2. Steve McCurry(スティーブ・マッカリー)
「アフガンの少女」で有名。
強烈な色彩と、魂を射抜くような「瞳」の捉え方は、ポートレートの究極系です。
3. 濱田英明(Hamada Hideaki)
日本の写真家。
透明感のあるフィルムライクな色彩と、家族や子供を撮る時の「距離感」が絶妙です。
「エモい」写真のルーツを知りたいなら、彼の作品を見るべきです。
ポートレートのマナーとモラル|嫌われないために
最後に、技術以上に大切なことです。
カメラを持つと、つい夢中になって周りが見えなくなりがちです。
1. 公共の場所を占領しない
良い場所を見つけても、長時間居座るのはNGです。
通行人の邪魔にならないように配慮しましょう。
また、駅や商業施設など、撮影禁止の場所でないか確認することも義務です。
2. 盗撮と疑われないように
望遠レンズを使っていると、遠くの人を狙っているように見えます。
誤解を招かないよう、モデルと明らかに会話しながら撮るなど、周囲へのアピールも必要です。
3. データの取り扱い
撮った写真をSNSにアップする際は、必ずモデルの許可を取りましょう。
「タグ付けしていいか」「修整してほしい箇所はないか」を確認するのが大人のマナーです。
まとめ|「愛」が一番のフィルター
技術的なことをたくさん書きましたが、一番大切なのは「被写体への愛(リスペクト)」です。
「この人のこの表情が素敵だな」「今の光、綺麗だな」
そう思ってシャッターを切った写真は、必ず見る人に伝わります。
まずは身近な家族や友人を、窓際の光で、ちょっと絞りを開けて撮ってみてください。
きっと「私ってこんなに良い顔してたんだ」と喜んでくれるはずです。
その笑顔を見ることこそが、ポートレート撮影の最大の報酬なのです。

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