「microSDカードなんてどれも同じ」と思っていないでしょうか。microSD Express 1TBは、従来のmicroSDカードとはバスインターフェースの設計思想がまったく異なります。PCIe+NVMeという、PCのSSDと同じプロトコルをカード内部に実装することで、理論上の最大転送速度は985MB/s。従来のUHS-I(最大104MB/s)と比較すると約9.5倍、UHS-II(最大312MB/s)と比較しても約3.2倍の速度差が生まれます。この記事では、microSD Express 1TBの物理的な仕組み、従来規格との速度差の根拠、2026年時点の対応機器と主要製品、そしてカメラ用途での可能性と課題まで、数値とデータで解説します。
・microSD Express 1TBが従来規格と根本的に異なる物理的理由
・UHS-I/UHS-II/microSD Expressの転送速度を数値で比較した結果
・2026年4月時点の対応機器・主要製品・実売価格
・カメラ用途での実用性と、購入前に確認すべき注意点
microSD Express 1TBとは?従来のmicroSDカードとバスインターフェースが根本的に違う
SDバスからPCIeバスへ|接続方式そのものが変わった
microSD Express 1TBの最大の特徴は、データ転送に使うバスインターフェースがSDバスからPCIeバスに切り替わった点です。従来のmicroSDカード(UHS-I、UHS-II、UHS-III)はすべてSDバスインターフェースを使用していました。SDバスは半二重通信が基本で、データの送受信を交互に行います。一方、microSD ExpressはPCIe Gen3 x1レーンを使用し、全二重通信でデータをやり取りします。この違いにより、同じクロック周波数でもデータのスループットが大幅に向上します。設定値で言えば、UHS-Iの理論値が最大104MB/s、UHS-IIが最大312MB/s(片方向624MB/s)であるのに対し、microSD ExpressはPCIe Gen3 x1の帯域幅である985MB/sを理論上限とします。注意点として、985MB/sはあくまで理論値であり、実際の製品ではコントローラーやNANDフラッシュの性能によって800〜900MB/s程度に落ち着きます。
NVMeプロトコルがもたらすランダムアクセスの改善
microSD Expressが速い理由は、PCIeバスだけではありません。アプリケーション層にNVMe(Non-Volatile Memory Express)プロトコルを採用している点も大きな要因です。従来のSDカードはSDAプロトコル(SD Association独自)でコマンドを処理しており、コマンドキューの深さが1でした。つまり、1つのコマンドが完了するまで次のコマンドを発行できません。NVMeはコマンドキューを最大65,535個持てるため、複数のコマンドを並列処理できます。この違いはシーケンシャルリード(連続読み出し)よりもランダムリード(不規則な位置の読み出し)で顕著に現れ、アプリケーションの起動やデータベースのアクセスが高速化します。カメラの用途では、サムネイル一覧の表示や、RAWファイルの部分読み出し時に体感速度が変わります。ただし、大容量の連続書き込み(動画記録など)ではシーケンシャル性能が支配的になるため、NVMeの恩恵はランダムアクセス時ほど大きくはありません。
ピン配置と後方互換性の物理的な仕組み
microSD Expressカードの外形寸法は従来のmicroSDカードと同一(11mm×15mm×1mm)です。端子の配置に工夫があり、従来の8ピンに加えて、第2列にPCIe用の追加端子が配置されています。対応ホスト機器に挿入するとPCIeモードで接続し、非対応機器に挿入すると従来のSDバスモードにフォールバックします。ここで注意すべき点があります。microSD Expressの第2列ピンは、UHS-IIが使用していた第2列ピンとは信号定義が異なります。そのため、UHS-II対応のカメラやリーダーにmicroSD Expressカードを挿入した場合、UHS-IIモードでは接続されず、UHS-Iモード(最大104MB/s)にフォールバックします。UHS-IIの速度(312MB/s)は得られないという点は、購入前に必ず理解しておくべき仕様です。
PCIe(Peripheral Component Interconnect Express):コンピュータ内部で高速データ転送を行うためのシリアルインターフェース規格。Gen3 x1レーンで片方向約985MB/sの帯域を持つ。
NVMe(Non-Volatile Memory Express):PCIe接続のストレージ向けに設計された通信プロトコル。コマンドキューの並列処理により、低遅延・高スループットを実現する。
フォールバック:上位規格で接続できない場合に、下位規格に自動的に切り替わる動作のこと。
microSD Express 1TBの転送速度をUHS-I・UHS-IIと数値で比較する
理論値で見る3規格の速度差|最大9.5倍の開き
microSD Express 1TBの速度を理解するには、まず3つの規格の理論上限値を並べて比較するのが最も分かりやすい方法です。UHS-Iの最大転送速度は104MB/s、UHS-IIは312MB/s(半二重)または624MB/s(全二重・片方向)、microSD ExpressはPCIe Gen3 x1で985MB/sです。UHS-Iを基準にすると、UHS-IIは約3倍、microSD Expressは約9.5倍の理論値を持ちます。ただし理論値と実測値には常に乖離があります。NANDフラッシュの書き込み速度がボトルネックになるため、特に書き込み速度は理論値から大きく下がる傾向があります。読み出し速度では理論値の85〜92%程度、書き込み速度では理論値の55〜65%程度が実製品の目安です。
| 規格 | バス | 理論最大速度 | 実測目安(読み出し) |
|---|---|---|---|
| UHS-I | SDバス | 104MB/s | 80〜95MB/s |
| UHS-II | SDバス(2列目追加) | 312MB/s | 250〜290MB/s |
| microSD Express | PCIe Gen3 x1+NVMe | 985MB/s | 800〜900MB/s |
書き込み速度の差はさらに大きい|動画記録に直結する指標
読み出し速度ばかりが注目されがちですが、カメラユーザーにとってより重要なのは書き込み速度です。RAW連写や4K/8K動画記録では、カメラのバッファからカードへの書き込み速度がボトルネックになります。UHS-I対応カードの書き込み速度は実測で50〜80MB/s程度、UHS-II対応カードで100〜250MB/s程度です。microSD Express 1TBの場合、Lexar PLAY PROの公称値はリード900MB/s・ライト600MB/sで、実測でも500〜580MB/s程度の書き込み速度が報告されています。この数値は、4K 60fps(ビットレート約200Mbps=25MB/s)の動画記録には十分すぎる余裕があり、8K 30fps(ビットレート約800Mbps=100MB/s)の記録にも対応できる水準です。注意点として、長時間の連続書き込みではNANDフラッシュのSLCキャッシュが枯渇し、速度が大幅に低下する場合があります。1TBモデルではSLCキャッシュ容量が比較的大きいため、512GBや256GBモデルよりこの問題は起きにくい傾向にあります。
実は読み出し速度よりもレイテンシの差が体感に響く
意外と知られていないことですが、microSD Expressが体感で速く感じる最大の理由は、転送速度の数値差よりもレイテンシ(応答遅延)の短縮にあります。従来のSDプロトコルでは、1回のコマンド発行から応答完了までの遅延が数十〜数百マイクロ秒でした。NVMeプロトコルでは、コマンド処理のオーバーヘッドが大幅に削減され、レイテンシは数マイクロ秒単位にまで短縮されます。例えば、1,000枚のJPEGサムネイル(各30KB)を読み出す場合、総データ量は約30MBとシーケンシャル速度では差が出にくい量ですが、1,000回のランダムアクセスが発生するため、レイテンシの差が累積して体感速度に直結します。UHS-Iカードで2〜3秒かかるサムネイル一覧表示が、microSD Expressでは0.5秒以下で完了する計算になります。カメラの再生画面で画像送りがスムーズになるのは、この低レイテンシが理由です。
microSD Express 1TBが速い物理的理由|PCIeとNVMeのアーキテクチャ
PCIe Gen3 x1レーンの帯域幅はどこから来るのか
PCIe Gen3の物理層は、1レーンあたり8GT/s(ギガトランスファー毎秒)のデータレートで動作します。エンコーディング方式に128b/130bを採用しており、オーバーヘッドは約1.5%です。実効帯域幅は8GT/s × (128/130) ÷ 8 ≒ 984.6MB/s、端数を丸めて約985MB/sとなります。これがmicroSD Expressの理論最大速度985MB/sの物理的な根拠です。従来のSDバスではクロック周波数を上げることで速度を稼いでいましたが、信号品質の劣化やEMI(電磁妨害)の問題が生じやすく、小型カードの実装面積では限界がありました。PCIeはシリアル差動信号を使用するため、同等の実装面積でもノイズ耐性が高く、高クロック動作に有利です。
PCIe帯域幅の計算式:実効帯域幅(MB/s)= データレート(GT/s)× エンコーディング効率 ÷ 8
PCIe Gen3 x1の場合:8GT/s × (128/130) ÷ 8 ≒ 985MB/s
PCIe Gen4 x1の場合:16GT/s × (128/130) ÷ 8 ≒ 1,969MB/s(将来のSD Express 8.0で採用予定)
NVMeのコマンドキューが並列処理を可能にする仕組み
NVMeプロトコルの核心は、サブミッションキュー(SQ)とコンプリーションキュー(CQ)の2つのリングバッファ構造にあります。ホスト(カメラやリーダー)がSQにコマンドを投入し、ストレージ(microSD Express)が処理完了後にCQに結果を書き込みます。NVMeでは最大65,535個のキューペアを持つことができ、各キューに最大65,536個のコマンドをエントリーできます。従来のSDプロトコルのコマンドキュー深度1と比較すると、理論上は数十億倍のコマンド並列度が可能です。実際のmicroSD Expressカードのコントローラーでは、キュー深度は32〜128程度に制限されていますが、それでも従来比で32〜128倍のコマンド処理能力を持ちます。連写後のバッファ書き出しでは、複数ブロックへの同時書き込みコマンドが発行でき、バッファクリアが高速化します。
1TBの大容量を支えるNANDフラッシュの多層化技術
microSD Express 1TBが11mm×15mmの小さなカードに1TBを収められる理由は、3D NANDフラッシュの多層化技術にあります。2026年時点の最新製品では、176層〜232層の3D TLC(Triple Level Cell)NANDが使用されています。TLCは1セルに3ビット(8値)を記録するため、同じダイ面積でSLC(1ビット)の3倍、MLC(2ビット)の1.5倍の容量を実現します。1TBモデルでは、256Gbチップを32枚スタック、または512Gbチップを16枚スタックする構成が一般的です。注意点として、TLC NANDはSLCやMLCと比較して書き込み耐久性(P/Eサイクル)が低く、一般的にTLCは1,000〜3,000回程度です。1TB全域を毎日1回書き換えた場合でも約3〜8年の寿命計算になりますが、カメラ用途では特定セクターに集中書き込みが発生しやすいため、ウェアレベリング(書き込み分散制御)の品質が製品ごとの耐久差につながります。
SLCキャッシュの容量が連続書き込み性能を左右する
microSD Express 1TBの書き込み速度が「最初は速いのに途中で急激に落ちる」現象を経験した場合、それはSLCキャッシュの枯渇が原因です。SLCキャッシュとは、TLC NANDの一部領域をSLCモード(1セルに1ビット)で動作させ、一時的に高速書き込みを実現する技術です。SLCモードの書き込み速度はTLCモードの約3倍です。1TBモデルの場合、SLCキャッシュ容量は製品により異なりますが、概ね50〜100GB程度が割り当てられています。この容量を超える連続書き込みが発生すると、TLCモードに切り替わり、書き込み速度は公称値の30〜50%程度まで低下します。例えば公称ライト600MB/sのカードが、SLCキャッシュ枯渇後は180〜300MB/s程度に落ちる計算です。4K動画の連続記録(25MB/s)であれば2,000秒(約33分)以上はSLCキャッシュ内に収まるため問題になりにくいですが、8K動画やRAW動画の記録では注意が必要です。
microSD Express 1TBの対応機器|2026年4月時点で使えるデバイス
Nintendo Switch 2が牽引役|microSD Express対応の現状
2026年4月時点で、microSD Expressに対応した主要デバイスとして最も知名度が高いのはNintendo Switch 2です。2025年6月に発売されたSwitch 2は、microSD Expressスロットを標準搭載し、ゲームデータの高速読み込みを実現しています。ゲーム用途とカメラ用途では求められる性能特性が異なりますが、Switch 2の登場によりmicroSD Express対応カードの生産量が増加し、価格低下と製品ラインナップの拡大が加速しました。1TBモデルの価格は発売当初の約250ドルから、2026年4月時点では約180〜200ドル程度にまで下がっています。
カメラ業界でのmicroSD Express対応はまだこれから
カメラ用途に限ると、2026年4月時点でmicroSD Expressスロットを搭載したカメラは限定的です。多くのミラーレスカメラはCFexpress Type BまたはSDカード(UHS-II対応)のデュアルスロット構成を採用しています。microSD Expressがカメラに搭載されるためには、カメラメーカーがPCIeコントローラーをボディ内に実装する必要があり、これは基板設計と消費電力の両面で課題があります。一方、アクションカメラやドローン搭載カメラなど、小型機器ではmicroSDスロットが主流であるため、microSD Express対応が進む可能性があります。注意点として、microSD Expressカードを既存のUHS-IIカメラに挿しても動作はしますが、前述の通りUHS-Iモード(最大104MB/s)にフォールバックするため、カードの性能を発揮できません。高額なmicroSD Express 1TBカードを購入しても、対応機器がなければ100MB/s程度の「高価なUHS-Iカード」になってしまいます。
失敗:microSD Express 1TBを購入したが、UHS-II対応のカメラに挿したらUHS-Iの速度(約100MB/s)しか出なかった。
原因:microSD ExpressのPCIeピンとUHS-IIのピンは信号定義が異なるため、UHS-IIモードでは接続されない。対応機器以外ではUHS-Iにフォールバックする。
対策:購入前に、使用機器がmicroSD Expressに対応しているか必ず確認する。カメラ用途であれば、UHS-II対応カードのほうがコストパフォーマンスが高い場合が多い。
カードリーダー選びも重要|PCIe対応リーダーが必須
PCでmicroSD Express 1TBの速度を活かすには、PCIe対応のカードリーダーが必要です。一般的なUSB 3.0対応のSDカードリーダーでは、リーダー内部のSDバスインターフェースがボトルネックとなり、UHS-Iの速度しか出ません。microSD Express対応リーダーは、内部にPCIeブリッジチップを搭載し、USB 3.2 Gen2(10Gbps=約1,200MB/s)以上のインターフェースでPCと接続します。2026年4月時点で市販されているmicroSD Express対応リーダーの実売価格は3,000〜8,000円程度です。USB 3.2 Gen2対応ポートがPCに必要な点も確認しておくべきです。USB 2.0ポートに接続した場合、最大480Mbps(約60MB/s)に制限され、UHS-Iよりも遅くなる可能性があります。
microSD Express 1TB主要製品の比較|Lexar・TeamGroup・Nextorageの実力
Lexar PLAY PRO 1TB|世界初の1TBモデルを投入したパイオニア
Lexar PLAY PRO microSD Express 1TBは、2025年に世界で初めて市販されたmicroSD Express 1TBカードです。公称スペックはリード最大900MB/s、ライト最大600MB/sで、UHS-I互換時はC10/U3/V30の速度クラスに対応します。実売価格は2026年4月時点で約199.99ドル(日本円で約29,000〜31,000円)です。Nintendo Switch 2での動作確認済みを前面に打ち出しており、パッケージにもSwitch 2対応ロゴが記載されています。スペックシート上の注意点として、リード900MB/sはシーケンシャルリードの最大値であり、ランダムリードの数値は公表されていません。SLCキャッシュ枯渇後の持続書き込み速度についても、公式データは開示されていないため、長時間の連続書き込み性能は未知数です。
TeamGroup APEX SD7.1 1TB|ゲーミング市場を狙った高速モデル
TeamGroup APEX SD7.1 microSD Express 1TBは、SD Express 7.1規格に準拠した製品で、公称リード速度は最大900MB/s、ライト速度は最大550MB/sです。Lexar PLAY PROと比較するとライト速度で50MB/s劣りますが、実測では差が縮まるケースもあります。価格はLexar PLAY PROとほぼ同等か、やや安価な傾向です。TeamGroupはゲーミングメモリ市場での実績があり、カード表面のヒートシンク的な凹凸加工が特徴です。ただしmicroSDカードのサイズでは放熱効果は限定的であり、デザイン上の差別化要素と捉えるのが妥当です。V30対応のため、UHS-I互換モードでの最低持続書き込み速度は30MB/sが保証されています。
| 製品名 | リード | ライト | 実売価格(税込目安) |
|---|---|---|---|
| Lexar PLAY PRO | 900MB/s | 600MB/s | 約29,000〜31,000円 |
| TeamGroup APEX SD7.1 | 900MB/s | 550MB/s | 約27,000〜30,000円 |
| Nextorage Gシリーズ EX | 900MB/s | 600MB/s | 約32,000〜35,000円 |
Nextorage GシリーズEX|ソニーグループの技術力を活かした高耐久モデル
Nextorage(ソニーグループのストレージ専業メーカー)のGシリーズEXは、リード900MB/s・ライト600MB/sとLexar PLAY PROと同等スペックですが、耐久性と品質管理で差別化しています。Nextorageはプロフェッショナル向けCFexpressカードで実績があり、NANDフラッシュの選別基準が厳格とされています。価格は3社の中では最も高い傾向にありますが、データ復旧サービスや長期保証が付帯する点がカメラユーザーには安心材料になります。注意点として、2026年4月時点では1TBモデルの在庫が安定しておらず、入手が難しい時期もあります。購入を急ぐ場合は、Lexar PLAY PROが最も流通量が多い選択肢です。
microSD Express 1TBをカメラで使うメリットと現状の限界
RAWデータの転送時間が劇的に短縮される計算
microSD Express 1TBの最大のメリットは、大量のRAWデータをPCに転送する時間の短縮です。具体的な数値で計算します。フルサイズミラーレスカメラのRAWファイルは1枚あたり約40〜60MB、1日の撮影で500枚撮った場合の総データ量は約20〜30GBです。UHS-Iカード(実測80MB/s)で30GBを転送すると約375秒(6分15秒)、UHS-IIカード(実測250MB/s)で約120秒(2分)、microSD Express(実測850MB/s)なら約35秒です。UHS-Iと比較して転送時間は約10分の1に短縮されます。ただし前提条件として、この速度を出すにはPCIe対応カードリーダーとUSB 3.2 Gen2以上のポートが必要です。
1TBの容量はRAW撮影で何枚分か|容量計算の実際
1TBの容量がどの程度の撮影量に対応するか、カメラの画素数別に計算します。2,400万画素機のRAWファイルは約25〜30MB/枚で、1TBあたり約33,000〜40,000枚。4,500万画素機のRAWファイルは約45〜60MB/枚で、1TBあたり約17,000〜22,000枚。6,100万画素機(Sony α7R Vなど)のRAWファイルは約60〜120MB/枚(非圧縮時)で、1TBあたり約8,500〜17,000枚です。4K 60fps動画(約200Mbps)の場合、1TBで約11時間の記録が可能です。1日の撮影旅行でカードを交換する必要がほぼなくなる容量と言えます。注意点として、カード1枚に全データを集約するリスクもあります。カードの紛失や故障で1TB分のデータを一度に失う可能性があるため、こまめなバックアップは必須です。
失敗:1TBカード1枚に全データを入れていたら、カードが読み取り不能になり数千枚の写真を喪失した。
原因:大容量カードへの過度な依存。NANDフラッシュの物理的な書き込み不良やファイルシステムの破損は、容量に関係なく発生しうる。
対策:撮影日ごとにPCまたはポータブルSSDへバックアップする。デュアルスロット搭載機であれば、2枚のカードへの同時記録を有効にする。1TBの大容量を「バックアップ不要」の根拠にしない。
2026年時点でカメラ用途にmicroSD Express 1TBを買うべきか
結論から述べると、2026年4月時点では「カメラ用途のためだけに」microSD Express 1TBを購入するのは時期尚早です。理由は3つあります。第一に、microSD Expressスロットを搭載したカメラがほとんど存在しないため、カード本来の速度を発揮できません。第二に、UHS-II対応の1TBカード(実売15,000〜20,000円)と比較して、microSD Express 1TBは30,000円前後と約1.5〜2倍の価格差があります。UHS-IIカメラで使う限り速度差はゼロなので、この価格差は容量に対するプレミアムではなく「将来への投資」です。第三に、多くのミラーレスカメラはフルサイズSDカードスロットかCFexpressスロットを搭載しており、microSDスロット自体が少数派です。一方、Nintendo Switch 2やポータブルゲーム機、将来のアクションカメラやドローンでの使用を見据えているなら、1枚持っておく価値はあります。
microSD Express 1TBの選び方と購入時の注意点|3つの判断基準
判断基準①:対応機器を「今」持っているか
最も優先すべき判断基準は、microSD Express対応機器を現在所有しているかどうかです。2026年4月時点で対応が確認されている主なデバイスは、Nintendo Switch 2、一部のポータブルゲーミングPC(ASUS ROG Ally等)、および一部のmicroSD Express対応カードリーダーです。これらのデバイスを持っていない場合、microSD Express 1TBを購入してもUHS-Iの速度(最大104MB/s)でしか使えません。30,000円のカードが100MB/sでしか動かない状況は、コストパフォーマンスとして成立しません。UHS-II対応の1TBカードであれば、UHS-II対応機器で250〜300MB/sの速度を出せて、価格も15,000〜20,000円です。対応機器がない場合は、UHS-IIカードを選ぶのが合理的です。
判断基準②:持続書き込み速度の公開データがあるか
カメラや動画記録で使う場合、シーケンシャルリードの最大値よりも持続書き込み速度のほうが重要です。動画記録は一定速度以上の書き込みを維持し続ける必要があり、瞬間最大速度では記録が途切れるかどうかを判断できません。製品選びの際は、メーカーが持続書き込み速度のデータを公開しているかを確認してください。ビデオスピードクラス(V30、V60、V90)の表記がある場合は、その数値が最低保証速度を示します。V30は最低30MB/s、V60は最低60MB/s、V90は最低90MB/sの持続書き込みを保証します。2026年4月時点のmicroSD Express 1TB製品の多くはV30対応ですが、V60やV90への対応は製品によって異なります。8K動画(100MB/s以上が必要)を記録する予定がある場合は、V90以上のクラス表記がある製品を選ぶ必要があります。
動画記録はリアルタイム処理です。カメラのセンサーが1秒間に生成するデータ量をカードが書ききれなければ、記録が停止するかフレームドロップが発生します。4K 60fps(ビットレート200Mbps=25MB/s)であれば、V30カード(最低30MB/s保証)で余裕があります。しかし8K 30fps(ビットレート400〜800Mbps=50〜100MB/s)では、V30の保証値では足りません。「最大書き込み600MB/s」はSLCキャッシュ有効時の瞬間値であり、持続書き込み速度はそれよりも低くなります。動画用途では最大値ではなく最低保証値で判断してください。
判断基準③:保証内容とデータ復旧サービスの有無
1TBのカードに大量のデータを集約する以上、カードの故障リスクへの備えが重要になります。製品選びの際は、メーカー保証の期間と範囲、データ復旧サービスの有無を確認してください。Nextorageは有償のデータ復旧サービスを提供しており、カードの物理故障時にもデータ救出の可能性があります。Lexarはメーカー保証に加えてオンラインでのファームウェアアップデートに対応しており、不具合修正や互換性改善が期待できます。注意すべき点として、保証対象は「カードの物理故障」であり、「データの消失」は通常保証対象外です。カード自体が交換されてもデータは戻らないため、バックアップの習慣が最も確実なデータ保護手段です。
まとめ|microSD Express 1TBは「次世代の標準規格」として準備を進める段階
microSD Express 1TBは、従来のmicroSDカードとはバスインターフェースの根本設計が異なる次世代規格です。PCIe Gen3 x1とNVMeプロトコルの採用により、理論最大985MB/sの転送速度を実現し、従来のUHS-I(104MB/s)比で約9.5倍、UHS-II(312MB/s)比で約3.2倍の速度向上を達成しています。2026年4月時点では対応機器がまだ限定的であり、カメラ用途での恩恵を受けるには対応機器の普及を待つ必要がありますが、技術的な優位性は明確です。
この記事の要点を整理します。
- microSD Expressは従来のSDバスではなくPCIe Gen3 x1バスを使用し、理論最大速度は985MB/s
- NVMeプロトコルによりコマンドキュー深度が1から32〜128に増加し、ランダムアクセスの低レイテンシ化を実現
- UHS-II対応機器に挿した場合はUHS-IIモードではなくUHS-Iモード(最大104MB/s)にフォールバックする
- 2026年4月時点の主要製品(Lexar PLAY PRO、TeamGroup APEX SD7.1、Nextorage GシリーズEX)はリード900MB/s・ライト550〜600MB/sのスペック帯
- 1TBモデルの実売価格は27,000〜35,000円で、UHS-II 1TBカード(15,000〜20,000円)の約1.5〜2倍
- 動画記録では最大書き込み速度ではなくビデオスピードクラス(V30/V60/V90)の最低保証値で判断する
- 1枚のカードに全データを集約するリスクがあるため、撮影日ごとのバックアップは必須
まず最初のステップとして、ご自身の機材がmicroSD Expressに対応しているか確認してください。対応機器を持っていない場合は、UHS-II対応の1TBカード(V60以上)を選ぶほうがコストパフォーマンスに優れます。対応機器を所有している、または近い将来の購入予定がある場合は、Lexar PLAY PRO 1TBが流通量・実績ともに最も安定した選択肢です。microSD Express対応カードリーダー(USB 3.2 Gen2以上)も同時に準備しておくと、PCへのデータ転送でもカードの性能を発揮できます。
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