iPhoneのRAWファイルはHEIFと何が違う?14ビット16,384階調が編集自由度を変える物理的理由

「iPhoneで撮った写真をあとから編集しようとしたら、空の色が不自然に崩れた」「暗部を持ち上げたらノイズだらけになった」——こうした経験があるなら、原因はファイル形式にあります。iPhoneの標準撮影はHEIF(またはJPEG)で保存されますが、この形式は撮影時にカメラが自動で情報を圧縮・破棄しています。一方、RAWファイルはセンサーが受け取った光の情報をほぼそのまま保持するため、編集時の自由度がまったく異なります。具体的には、RAWファイルのデータ量はHEIFの約6〜12倍。12MPのApple ProRAWで約25MB、48MPでは約75MBに達します。この情報量の差が、ホワイトバランスの変更や露出の±3EV補正でも画質が破綻しない理由です。

📷 この記事でわかること
・iPhoneのRAWファイル(Apple ProRAW)の仕組みと通常写真との物理的な違い
・RAW撮影の設定方法と対応機種の一覧
・RAWファイルの編集手順と、シーン別の撮影設定値
・ストレージ管理の具体的な計算と失敗しないワークフロー
目次

iPhoneのRAWファイルとは|HEIF比で6〜12倍の情報量を持つデータ形式

RAWファイルの正体はセンサーの「生データ」そのもの

RAWファイルとは、イメージセンサーが受光した電気信号をA/D変換した直後の数値データです。通常のHEIF/JPEGが「カメラ内で現像済みの完成写真」であるのに対し、RAWは「現像前の素材」に相当します。iPhoneの場合、Apple ProRAWという独自形式(拡張子.dng)で保存され、14ビットのリニアDNGフォーマットを採用しています。14ビットということは、1ピクセルあたり16,384階調の明暗情報を記録できます。8ビットJPEGの256階調と比べると64倍の階調差です。この階調の豊かさが、暗部の持ち上げやハイライトの復元で画質差として現れます。注意点として、RAWファイルはそのままSNSにアップロードできない場合が多く、共有前にHEIFやJPEGへの変換が必要です。

Apple ProRAWが一般的なRAWと異なる点|計算写真との融合

一般的なデジタルカメラのRAWは、センサーの生データだけを保存します。しかしApple ProRAWは、Deep FusionやSmart HDRといったiPhone独自の計算写真処理の結果もRAWデータに統合しています。具体的には、複数フレームの合成によるノイズ低減処理や、セマンティックレンダリング(被写体認識に基づく最適化)の情報がDNGファイル内に埋め込まれます。これにより、通常のRAWでは得られない低ノイズと、RAWならではの編集自由度を両立しています。ただし、この計算処理が加わる分、撮影から保存までに約1〜2秒のタイムラグが発生します。連写が必要なシーンでは、このラグを考慮してHEIF撮影に切り替える判断が求められます。

ファイルサイズの物理的根拠|なぜ25MBと75MBになるのか

Apple ProRAWのファイルサイズは、12MP撮影で約25MB、48MP撮影で約75MBです。この数値の根拠を計算すると明確になります。12MP(4,032×3,024ピクセル)×14ビット÷8=約21.2MB。これにメタデータ、サムネイル、計算写真の補助データが加わり約25MBとなります。一方、同じ12MPのHEIF写真は約2〜4MBです。つまりRAW1枚あたりHEIFの6〜12倍のストレージを消費します。48MPの場合は単純にピクセル数が4倍になるため、約75MBに達します。128GBのiPhoneでシステム領域を除くと実質約110GB使用可能ですから、48MP ProRAWだけで撮影すると約1,460枚で容量が尽きる計算になります。

🔍 なぜそうなる?仕組みを解説
RAWファイルが大きい理由は「非可逆圧縮をしない」ことに尽きます。HEIFやJPEGは人間の目に見えにくい情報を数学的に間引く非可逆圧縮を行い、データ量を1/5〜1/10に削減します。RAWはこの間引きを行わないため、センサーが取得した全情報が保持されます。情報を捨てていないからこそ、後から自由に編集できるのです。

iPhoneでRAWファイルを撮影する設定方法|対応機種と有効化手順

Apple ProRAW対応機種は「Pro」ラインに限定される

Apple ProRAWに対応しているのは、iPhone 12 Pro/12 Pro Max以降のProモデルです。iPhone 12 Pro・13 Proは12MP RAWのみ対応、iPhone 14 Pro以降は12MPと48MPの2つの解像度を選択できます。iPhone 16 Pro/16 Pro Maxでは48MPの適用範囲がメインカメラ(24mm)に加えて超広角(13mm)にも拡大されています。無印iPhone(iPhone 15、iPhone 16など)はApple ProRAW非対応です。ただし、サードパーティアプリ(Halide、ProCam等)を使えば、無印iPhoneでもBayer RAW(通常のDNG)での撮影は可能です。この場合、計算写真処理は適用されず、ファイルサイズも10〜15MB程度に抑えられます。

設定の有効化は「設定→カメラ→フォーマット」の3ステップ

ProRAWを有効にする手順は次の通りです。①「設定」アプリを開き「カメラ」をタップ。②「フォーマット」を選択。③「写真撮影」セクションにある「Apple ProRAW & 解像度コントロール」をオンにします。iOS 17以降では、この設定がオンの状態でカメラアプリを開くと、画面上部に「RAW」ボタンが表示されます。ボタンに斜線が入っている状態はRAWオフ(HEIF保存)、斜線なしがRAWオン(ProRAW保存)です。撮影のたびにRAW/HEIFを切り替えられるので、スナップはHEIF、作品撮りはRAWと使い分けが可能です。注意点として、ナイトモードやポートレートモードなど一部の撮影モードではProRAWが無効になる場合があります。

解像度の切り替え方|12MPと48MPはどちらを選ぶべきか

iPhone 14 Pro以降では、カメラアプリの画面上部に表示される解像度表示(「12」または「48」)をタップすることで切り替えができます。12MP(25MB)と48MP(75MB)の選択基準は明確です。SNS投稿やWeb掲載が主目的なら12MPで十分です。Instagramの表示解像度は最大1,080×1,350ピクセル(約1.5MP)であり、12MPでも8倍のオーバーサンプリングとなります。一方、A3以上のプリント出力やトリミング(クロップ)前提の撮影では48MPが有効です。48MPなら画像の25%をクロップしても12MP相当の解像度が残ります。ただし48MPは1枚75MBですから、256GB以上のストレージモデルでないと撮影枚数が厳しくなります。

⚙️ iPhone RAWファイル対応機種と解像度一覧(カメラと写真の教科書調べ)

機種 ProRAW対応 選択可能解像度 1枚あたりサイズ
iPhone 12 Pro / Pro Max 12MPのみ 約25MB
iPhone 13 Pro / Pro Max 12MPのみ 約25MB
iPhone 14 Pro / Pro Max 12MP / 48MP 25MB / 75MB
iPhone 15 Pro / Pro Max 12MP / 48MP 25MB / 75MB
iPhone 16 Pro / Pro Max 12MP / 48MP 25MB / 75MB
無印iPhone(サードパーティアプリ使用) ×(Bayer RAWは可) 12MP 約10〜15MB

iPhoneのRAWファイルとHEIF/JPEGの違い|データ構造を物理的に比較する

ビット深度の差が編集耐性を決める|14bit vs 8bitの階調差は64倍

RAWファイルとHEIF/JPEGの最大の違いはビット深度です。Apple ProRAWは14ビット、HEIFは10ビット(内部処理)、JPEGは8ビットで記録されます。ビット深度は1ピクセルが表現できる明暗の段階数を決定します。14ビットは2の14乗=16,384階調、8ビットは256階調です。この差が顕著に現れるのが、露出補正とシャドウの持ち上げです。8ビットJPEGで暗部を+2EV持ち上げると、256階調の中で隣接する値の差が拡大し、トーンジャンプ(階調の段差)やバンディング(縞模様)が発生します。14ビットRAWでは同じ+2EV補正でも16,384階調の中での操作となるため、滑らかな階調が維持されます。露出を±2EV以上補正する可能性がある場面では、RAWで撮影しておくことが合理的です。

ホワイトバランスの自由度|RAWなら撮影後に色温度を変更できる理由

HEIFやJPEGでは、撮影時に設定したホワイトバランス(色温度)がピクセルデータに焼き付けられます。撮影後に色温度を変更すると、すでに適用された色変換の上にさらに変換を重ねることになり、色の精度が低下します。RAWファイルの場合、ホワイトバランスはメタデータとして記録されているだけで、ピクセルデータ自体には適用されていません。したがって、現像時に2,000K〜10,000Kの範囲で色温度を自由に設定し直しても、画質の劣化は発生しません。蛍光灯下で撮影した写真の緑被りを除去する、夕景の色温度を3,200Kに下げて青みを強調する——こうした操作はRAWファイルでこそ正確に行えます。HEIFで同じ操作をすると、肌色が不自然にシフトするなどの問題が起きやすくなります。

ダイナミックレンジの差|ハイライト復元はRAWだけの特権

ダイナミックレンジとは、1枚の写真に記録できる最も明るい部分と最も暗い部分の輝度比です。Apple ProRAWはSmart HDR処理を統合しているため、通常のRAWよりもさらに広いダイナミックレンジを確保しています。実測値で約12〜13EVのダイナミックレンジを持ちます。HEIFでもSmart HDRは適用されますが、8〜10ビットに圧縮された時点でハイライトとシャドウの情報が切り捨てられます。RAWファイルでは、白飛びしたように見える空の部分にも実は階調データが残っていることが多く、現像ソフトのハイライトスライダーを-100に設定すると雲のディテールが復元できます。HEIFで白飛びした部分はデータ自体が存在しないため、どのソフトを使っても復元不可能です。逆光の風景や、窓と室内が同時に写り込むシーンでは、RAW撮影が特に有効です。

📖 用語チェック
ダイナミックレンジ:写真に記録できる最大輝度と最小輝度の比率。EV(Exposure Value)で表記し、1EVは明るさ2倍に相当。12EVのダイナミックレンジは、最暗部と最明部で4,096倍の輝度差を記録できることを意味します。
トーンジャンプ:階調の段階数が不足して、本来なめらかなグラデーションが段差状に見える現象。ビット深度が低いファイルを大きく補正すると発生しやすくなります。

iPhoneのRAWファイルを編集・現像する方法|3つのアプリと手順

iPhone標準の写真アプリでRAWファイルを編集する基本手順

最も手軽な方法は、iPhoneにプリインストールされている「写真」アプリでの編集です。RAWファイルを選択して「編集」をタップすると、画面右上に「RAW」バッジが表示されます。このバッジをタップすると、RAW現像とHEIF変換後の画像を切り替えて比較できます。写真アプリで調整可能なパラメータは、露出(±2EV)、ブリリアンス、ハイライト、シャドウ、コントラスト、明るさ、ブラックポイント、彩度、自然な彩度、暖かみ、色合いの11項目です。RAWファイルであれば、これらのスライダーを大きく動かしても画質の破綻が起きにくい点が強みです。ただし、写真アプリにはトーンカーブやカラーミキサーといった高度な編集機能がないため、精密な色調整が必要な場合は別のアプリを使う必要があります。

Lightroom MobileでRAWファイルの性能を最大限に引き出す

Adobe Lightroom Mobile(無料版でもRAW編集可能)は、iPhoneのRAWファイル編集において最も機能が充実したアプリです。トーンカーブ、HSL(色相・彩度・輝度の個別調整)、カラーグレーディング、レンズ補正、ノイズリダクションなど、デスクトップ版とほぼ同等の編集機能を搭載しています。RAWファイルの14ビット階調を活かすには、まず露出とホワイトバランスを調整し、次にハイライト・シャドウで明暗のバランスを取り、最後にトーンカーブで微調整する手順が効率的です。書き出し時の設定は、Web用ならJPEG品質80%・長辺2,048px、プリント用ならTIFF 16bit・最大解像度を選択します。注意点として、Lightroom Mobileの無料版ではクラウド同期が制限されるため、大量のRAWファイルを扱う場合は有料プラン(月額1,180円〜)を検討する必要があります。

Snapseedで手軽にRAWファイルを現像する方法

Google製の無料アプリSnapseedもDNGファイルの読み込みに対応しています。Snapseedの強みは、部分調整(ブラシツール)を使って画像の特定部分だけを明るくしたり彩度を変えたりできる点です。たとえば、空だけの露出を-1EV下げて青を濃くし、前景の建物は+0.5EV持ち上げるといった操作が直感的に行えます。RAWファイルを開くと自動的にRAW現像画面が表示され、露出、ホワイトバランス、ハイライト、シャドウの4項目を先に調整してから通常編集に進む構造になっています。注意点として、Snapseedで書き出した画像はJPEG固定であり、TIFF出力には対応していません。高画質での保存が必要な場合はLightroom Mobileを使う方が適切です。また、Snapseedはカラーグレーディング機能が弱いため、映画風の色味を作り込む用途にはやや力不足です。

📷 RAWファイル編集の基本手順
①ホワイトバランスを設定(撮影時と異なる場合は先に修正)
②露出を±0.5〜1EV以内で調整
③ハイライトを下げ、シャドウを上げてダイナミックレンジを活用
④コントラストとトーンカーブで最終調整
⑤Web用はJPEG品質80%、プリント用はTIFF 16bitで書き出し

iPhoneのRAWファイルで差が出るシーン別撮影設定|5つの場面を検証

逆光ポートレートでRAWファイルが必要な物理的理由

逆光ポートレートは、背景の空が白飛びするか、人物の顔が黒つぶれするかの二択を迫られるシーンです。HEIFで撮影すると、カメラの自動露出は背景と人物の中間値を選びがちで、結果として「空は白飛び、顔はやや暗い」という中途半端な写真になります。RAWで撮影すれば、現像時にハイライトを-80〜-100に設定して空の色を復元し、シャドウを+50〜+70に設定して顔の明るさを持ち上げることが可能です。iPhoneのProRAWはSmart HDRの情報も含むため、この操作での画質低下は最小限に抑えられます。撮影時の設定は、顔にタップしてフォーカスを合わせ、露出を+0.3〜+0.5EV程度持ち上げておくのが基本です。露出をやや上げておくことで、シャドウ側の情報量が増え、現像時のノイズ発生を抑制できます。

夜景・低照度でRAWファイルを使う場合の注意点

夜景撮影でRAWが有効に機能する条件は、ISO 800以下で撮影できる程度の光量がある場合です。iPhoneのセンサーサイズは1/1.28インチ(iPhone 16 Pro)と、フルサイズセンサーの約1/7.5の面積しかありません。この物理的制約により、ISO 1600以上ではノイズが急増し、RAWファイルのノイズリダクション前の生データはHEIF(ノイズリダクション適用済み)よりもノイズが目立つ場合があります。つまり、暗すぎるシーンではRAWよりもiPhoneの計算写真処理に任せたHEIFのほうがきれいに仕上がることがあります。RAWで夜景を撮る場合は、三脚やスマホホルダーで固定し、SS 1/4秒〜1秒、ISO 100〜400の範囲で撮影するのが理想です。手持ちでISO 3200以上が必要な暗さなら、HEIFに切り替える判断が合理的です。

風景撮影でRAWファイルのダイナミックレンジを活かす設定

朝夕の風景は、空と地面の輝度差が5〜8EVに達します。この輝度差をHEIFの8ビットで記録すると、空か地面のどちらかの階調が失われます。RAWの14ビットであれば、12〜13EVのダイナミックレンジを活かして両方の階調を保持できます。撮影設定は、超広角カメラ(13mm相当)を使い、HDRを有効にした状態でRAW撮影を行います。露出は空のハイライトが飛ばない値に合わせ(画面内の最も明るい部分をタップして-0.5〜-1.0EV補正)、地面の暗部は現像時に持ち上げます。この「ハイライト基準の露出」がRAW風景撮影の基本原則です。実は、ハイライトを基準に露出を決めてシャドウを持ち上げる手法は、フィルム時代のネガ現像と同じ原理に基づいています。デジタルセンサーはハイライト側の情報が失われると復元不可能ですが、シャドウ側は持ち上げても相対的に画質劣化が少ないためです。

料理・物撮りでRAWファイルのホワイトバランスが威力を発揮する場面

料理写真で最も重要なのは色の正確さです。レストランの照明は白熱灯(約3,000K)、蛍光灯(約4,500K)、LED(約5,000K)が混在していることが多く、iPhoneのオートホワイトバランスが誤判定するケースが頻発します。オレンジ色の照明下で料理が黄色く写る、蛍光灯で肉の色が青緑にかぶる——これらの問題はHEIFで撮影すると後から修正が困難です。RAWファイルなら、現像時にホワイトバランスを3,000K〜6,500Kの範囲で自由に調整でき、料理本来の色を正確に再現できます。撮影設定としては、料理にフォーカスを合わせ、露出を+0.3EV程度持ち上げてやや明るめに撮るのが定石です。暗い写真は食欲を減退させるため、露出は明るめに設定し、現像時にハイライトだけを抑える方法が効果的です。

⚙️ シーン別RAWファイル撮影設定(カメラと写真の教科書調べ)

シーン 露出補正 推奨ISO RAW推奨度
逆光ポートレート +0.3〜+0.5EV ISO 50〜200 ◎ 必須
夜景(三脚あり) ±0EV ISO 100〜400 ◎ 必須
夜景(手持ち・ISO 1600超) ISO 1600〜 △ HEIFが有利
朝夕の風景 -0.5〜-1.0EV ISO 50〜100 ◎ 必須
料理・物撮り +0.3EV ISO 50〜400 ○ 推奨
日中スナップ ±0EV ISO 50〜100 △ HEIFで十分

iPhoneのRAWファイル管理と容量対策|ストレージを圧迫しないワークフロー

RAWファイルのストレージ消費量を正確に計算する

iPhoneのRAWファイル管理で最初に把握すべきは、正確なストレージ消費量です。12MP ProRAWは1枚約25MB、48MP ProRAWは1枚約75MBです。旅行で1日200枚撮影すると仮定した場合、12MPなら200×25MB=5GB/日、48MPなら200×75MB=15GB/日を消費します。1週間の旅行で12MP RAWだけを使った場合、35GBのストレージが必要になります。128GBモデルではシステム領域を引くと実質110GB程度のため、RAW撮影だけでも3週間分程度しか保存できません。一方、HEIFなら200枚×3MB=600MB/日で済みます。この25倍の容量差を理解した上で、RAWとHEIFの使い分けルールを決めておくことが不可欠です。

iCloudとの連携で注意すべき落とし穴

iCloud写真を有効にしている場合、RAWファイルもiCloudに自動アップロードされます。ここで注意すべきは、iCloudの容量プランとアップロード速度です。無料プランは5GBしかなく、12MP ProRAW 200枚(5GB)で容量が尽きます。50GBプラン(月額130円)でも、48MP ProRAWを頻繁に撮影すると1〜2ヶ月で満杯になります。200GBプラン(月額400円)または2TBプラン(月額1,300円)への切り替えが現実的です。アップロード速度も問題になります。上り速度10Mbpsの回線で、1日5GBのRAWファイルをアップロードするには約67分かかります。Wi-Fi接続時にしかアップロードされない設定がデフォルトのため、モバイル回線のみで生活している場合はiCloudへの同期が滞留します。

PCへの転送とバックアップ|RAWファイルの長期保管戦略

RAWファイルを長期保管するには、PCまたは外付けストレージへの定期的な転送が必要です。Macの場合、Lightning/USB-Cケーブルで接続し、「写真」アプリまたは「イメージキャプチャ」で取り込みます。Windowsでは、iPhoneをPCに接続し「DCIM」フォルダからDNGファイルを直接コピーする方法が確実です。転送後の管理としては、Lightroom Classic(デスクトップ版)にRAWファイルをインポートし、年月別フォルダ(例: 2026/04/)で整理するのが定番のワークフローです。バックアップは3-2-1ルール(3コピー、2種類の媒体、1つはオフサイト)に従い、PC内蔵SSD+外付けHDD+クラウドストレージの3箇所に保存するのが安全です。1TBの外付けHDDは5,000円前後で入手可能で、12MP ProRAWなら約40,000枚を保存できます。

⚠️ 初心者がやりがちな失敗
RAWファイルをiCloudの無料5GBプランのまま放置する:RAW撮影を始めると、HEIFの6〜12倍の速度でiCloud容量が消費されます。iCloudが満杯になるとバックアップ全体が停止し、写真だけでなく連絡先やアプリデータのバックアップも失われるリスクがあります。RAW撮影を始める前に、iCloudプランの見直しまたはPC転送ワークフローの構築を行ってください。

iPhoneのRAWファイルでよくある失敗と対処法|初心者が見落とす3つの落とし穴

失敗1:すべての写真をRAWで撮影してストレージが枯渇する

RAW撮影の最大の失敗パターンは「すべてのシーンでRAWを使ってしまう」ことです。RAW撮影が真価を発揮するのは、あとから露出やホワイトバランスを大きく調整する必要がある場面に限られます。日中の屋外スナップ、メモ代わりの記録写真、SNSのストーリーズ用の写真など、撮って出しで問題ないシーンではHEIFで十分です。RAW/HEIF切り替えの判断基準は「この写真をあとから編集するか?」の一点です。答えがNoなら、RAWで撮影する理由はありません。具体的には、逆光・夜景・料理・作品撮りはRAW、それ以外のスナップはHEIFと使い分けるルールを設けるだけで、ストレージ消費量は1/3以下に抑えられます。

失敗2:RAWファイルを編集せずにそのまま共有してしまう

RAWファイル(.dng)をそのまま他人に送信したり、SNSにアップロードしようとする失敗も多発しています。RAWファイルは「未現像の素材」であるため、そのままでは色味がフラット(コントラストが低く彩度が薄い)に見えます。これは不具合ではなく、RAWの仕様です。RAWファイルは必ず現像処理を行い、JPEGまたはHEIFに書き出してから共有する必要があります。写真アプリで編集を一切行わずに「共有」ボタンを押した場合、iOS側が自動的にJPEGに変換して送信しますが、この自動変換は最低限の処理しか行わないため、本来のRAW編集の恩恵を受けられません。RAWで撮影したら、必ず5分程度の現像作業を行ってから書き出す習慣をつけてください。

失敗3:ナイトモードとProRAWの併用で予想外の結果になる

iOS 15以降ではナイトモードとProRAWの同時使用が可能になりましたが、両者の動作原理を理解していないと予想外の結果になります。ナイトモードは複数フレーム(最大30フレーム)を合成して明るさとノイズを改善する処理です。ProRAWでナイトモードを使用すると、この合成処理の結果がRAWデータに統合されます。しかし、合成処理によってシャドウ部のノイズパターンが通常のRAWと異なるため、Lightroom等のノイズリダクション設定が効果的に機能しないことがあります。ノイズリダクションの輝度設定を通常の15〜25から10〜15に下げ、ディテール保持を優先する調整が必要です。また、ナイトモードの長時間露光(3〜5秒)中に手ブレが発生すると、合成処理でも補正しきれないブレが残ります。三脚なしで3秒以上のナイトモードを使う場合は、壁や手すりにiPhoneを押し付けて固定する方法が有効です。

⚠️ 初心者がやりがちな失敗
「RAWで撮れば自動的に高画質になる」と誤解する:RAWファイルはあくまで「素材」であり、そのままでは完成写真になりません。現像(露出・ホワイトバランス・コントラストの調整)を行って初めてRAWの性能が引き出されます。現像しないRAWは、食材を買って冷蔵庫に入れたまま「料理をしていない」のと同じ状態です。

まとめ|iPhoneのRAWファイルを使いこなすために押さえるべき7つのポイント

iPhoneのRAWファイル(Apple ProRAW)は、センサーが受け取った14ビット・16,384階調の光情報をほぼそのまま保持するデータ形式です。HEIFやJPEGでは撮影時に不可逆圧縮で捨てられる情報が残っているからこそ、露出補正±3EV、ホワイトバランスの完全な変更、ハイライトの復元といった大幅な編集が画質を損なわずに行えます。ただし、RAWはすべてのシーンで必要なわけではありません。編集しない日常スナップにはHEIFで十分であり、高ISO(1600以上)の暗所ではiPhoneの計算写真処理に任せたHEIFのほうが良い結果になるケースもあります。

この記事の要点を整理します。

  • Apple ProRAWは14ビット(16,384階調)のDNG形式。8ビットJPEGの256階調と比べて64倍の階調情報を保持する
  • 対応機種はiPhone 12 Pro以降のProモデル。14 Pro以降は12MP(25MB)と48MP(75MB)を選択可能
  • 設定の有効化は「設定→カメラ→フォーマット→Apple ProRAW & 解像度コントロール」の3ステップ
  • RAWが特に有効なシーンは逆光ポートレート、朝夕の風景、料理撮影。手持ち夜景(ISO 1600超)はHEIFが有利
  • 編集アプリは写真アプリ(手軽)、Lightroom Mobile(高機能)、Snapseed(部分調整)の3択
  • ストレージ管理が最重要課題。12MP RAWは1枚25MBで、HEIFの6〜12倍の容量を消費する
  • RAWファイルは「未現像の素材」であり、必ず現像処理を行ってからJPEG/HEIFに書き出して共有する

まずは「逆光の人物写真」をRAWとHEIFの両方で1枚ずつ撮影し、シャドウを+50に持ち上げて画質の違いを確認してみてください。RAWファイルの階調の豊かさを一度体感すれば、どのシーンでRAWを使うべきかの判断基準が自然に身につきます。

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この記事を書いた人

写真の教科書 編集部では、
カメラ初心者から中級者の方に向けて、
設定・用語・撮影の考え方をわかりやすく整理しています。

「感覚」や「経験」ではなく、
理屈から理解できる解説を大切にしています。

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