「動画用レンズは画質が甘い」——そんな先入観を持っていないでしょうか。NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZは、ニコン初のフルサイズ対応パワーズームレンズとして2025年4月に発売されました。焦点距離28mmから135mmをF4通しでカバーし、11段階の電動ズーム速度を備えるこのレンズは、動画撮影の効率を根本から変える設計です。しかし注目すべきは動画性能だけではありません。MTFチャートを見ると10本/mmの曲線がほぼ上限に張りつき、スチル撮影でも高い解像性能を発揮します。この記事では、NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZの光学設計・パワーズーム機構・収差特性・ブリージング抑制の仕組みを物理データと数値で分解し、「このレンズが本当に必要な撮影者は誰か」を明確にします。
・NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZの光学設計と基本スペックの読み方
・パワーズーム11段変速の物理的仕組みと使い分け
・MTF・歪曲収差・ブリージングの実測データに基づく性能評価
・シーン別(動画・ポートレート・風景・室内)の具体的な設定値
NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZとは?動画用光学設計が生んだ新ジャンルのズームレンズ

「動画用光学設計基準」という従来のスチルレンズとの決定的な違い
NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZは、ニコンが「動画用の光学設計基準」を採用したと公式に明言している初のフルサイズZマウントレンズです。従来のスチル用ズームレンズは、MTF(解像度)と色収差補正を最優先に設計されてきました。一方、動画用設計ではフォーカスブリージング(ピント移動時の画角変動)の抑制とズーム時のピント面安定性が追加の設計要件に入ります。光学系は18群23枚構成で、EDレンズ3枚・非球面レンズ3枚を含みます。スチル専用レンズが12〜16枚程度のレンズ構成で済むのに対し、23枚という枚数はブリージング補正用の補正群を追加しているためです。ただしレンズ枚数が増えると光量損失も増加するため、T値(実効F値)はF4.0よりやや暗くなる点は認識しておく必要があります。
基本スペック一覧|重量1,120g・フィルター径95mmの意味
レンズ本体の重量は1,120g(三脚座なし)、三脚座を含めると1,210gです。同じ焦点距離帯のNIKKOR Z 24-120mm f/4 Sが630gであることと比較すると、約1.8倍の重量です。この差はパワーズームモーター、ブリージング補正光学群、そして95mmという大口径フィルターを支える鏡筒構造に起因します。外径105mm×全長177.5mmという寸法は、ジンバル搭載時にカメラボディとのバランスを取りやすい重心位置になるよう設計されています。フィルター径95mmは市販のNDフィルター・PLフィルターの選択肢がやや少なくなるサイズ帯であり、購入前にフィルター予算を確認すべきポイントです。ニコンダイレクト価格は368,500円(税込)で、スチル用の24-120mm f/4 S(約148,500円)の約2.5倍の価格設定となっています。
Zマウントの大口径が28-135mm F4通しを可能にした光学的理由
Zマウントの内径は55mm、フランジバックは16mmです。Fマウント(内径44mm・フランジバック46.5mm)と比較すると、内径が11mm拡大し、フランジバックが30.5mm短縮されています。この構造的余裕により、後玉を大きく設計でき、周辺光量の低下を抑えながらF4通しの設計が実現しました。28mm広角端でも周辺光量落ちが約1.2段に収まっているのは、大口径マウントの恩恵です。Fマウント時代のAF-S 28-300mm f/3.5-5.6G VRは広角端でF3.5、望遠端でF5.6と開放値が変動しましたが、Zマウントの光学的自由度がF4通しという使いやすい仕様を可能にしています。
パワーズーム(PZ):電動モーターでズームリングを駆動し、一定速度で滑らかにズームする機構。手動ズームではどうしても発生する速度ムラを排除できるため、動画撮影で特に有効です。
T値:レンズの光透過率を考慮した実効F値。レンズ枚数が多いほどF値とT値の差が開きます。
パワーズーム11段変速の仕組み|NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZが実現する滑らかなズーム制御
電動ズームの速度制御はステッピングモーターのパルス周波数で決まる
NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZのパワーズームは、ステッピングモーターの駆動パルス周波数を11段階に制御することで速度を変えています。ステッピングモーターは1パルスあたりの回転角が固定されており、パルス間隔を変えることで回転速度が線形に変化します。最も遅い速度では28mmから135mmまでのズーム全域を約20秒かけて移動し、最速では約1秒で移動します。手動ズームリングのような回転トルクのムラが物理的に発生しないため、動画撮影中のズーム速度が一定に保たれます。この11段変速はカメラボディ側のメニューまたはレンズ側のズームレバーの倒し角で選択できます。
ズームレバーの倒し角と速度の関係|リニア制御と段階制御の違い
ズームレバーには2つの操作モードがあります。リニア制御では倒し角に比例してズーム速度が無段階に変化し、段階制御では倒し角に関係なく設定した速度で一定駆動します。動画撮影では段階制御が推奨される場面が多く、理由は撮影中にレバーを微妙に操作する必要がなくなるためです。一方、スチル撮影で構図を素早く変えたい場合はリニア制御が有利です。ただし段階制御の最低速(レベル1)でも動画のスローズームとしてはやや速いと感じるケースがあり、その場合はカメラ側のクロップ倍率を併用して見かけのズーム速度を稼ぐ手法が有効です。
パワーズーム使用時の消費電力とバッテリー持続時間への影響
パワーズームのモーター駆動はバッテリーから電力を消費します。ニコンZ8にNIKKOR Z 28-135mm f/4 PZを装着してパワーズームを連続使用した場合、パワーズーム未使用時と比較してバッテリー持続時間は約15〜20%短縮されます。EN-EL15cバッテリー1本での4K 60p動画撮影可能時間は、パワーズーム未使用時が約80分、連続使用時が約65分です。長時間の動画撮影では予備バッテリーの追加が事実上必須です。省電力のため、パワーズームを使わない待機時はレンズ側のスイッチでPZをOFFにしておくことで消費電力を抑えられます。
パワーズームをONのまま放置してバッテリー切れ:パワーズーム機構はON状態でもモーターに微小電流が流れ続けます。撮影の合間にスイッチをOFFにする習慣をつけないと、肝心なシーンでバッテリー残量不足に陥ります。予備バッテリーを最低2本用意し、PZ不使用時はスイッチをOFFにしてください。
NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZのMTF・収差データを数値で検証する
MTFチャートの読み方|10本/mmと30本/mmで見るべきポイントが違う
MTF(Modulation Transfer Function)チャートは、レンズの解像性能をコントラスト再現率で数値化したグラフです。10本/mmの曲線はコントラスト特性(明暗差の再現力)、30本/mmの曲線は解像力(細部描写力)を表します。NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZのMTFチャートでは、28mm広角端のF4開放で10本/mmの曲線が像高20mmまで0.9以上を維持し、コントラスト特性が高水準です。30本/mmも像高15mmまで0.7以上をキープしており、中央部の解像力はスチル用のNIKKOR Z 24-120mm f/4 Sに匹敵します。135mm望遠端では10本/mmが像高15mmで0.85程度に低下しますが、動画用途では4K解像度(約830万画素)に十分な解像性能です。
歪曲収差|広角端の樽型1.5%と望遠端の糸巻き型4.82%が意味すること
NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZは、28mm広角端で約1.5%の樽型歪曲、135mm望遠端で最大4.82%の糸巻き型歪曲が発生します。4.82%という数値は、画面端の直線が目視でも明確に曲がるレベルです。ただしZマウントカメラはボディ内の歪曲補正が常時ONで、RAWファイルにも補正プロファイルが埋め込まれます。Lightroomやcapture NX-Dで現像する場合、プロファイル補正を適用すれば歪曲はほぼゼロに補正されます。問題は動画撮影時で、4K以上の高解像度では歪曲補正による画角クロップが約2〜3%発生し、実効画角がわずかに狭くなります。135mm端でのフレーミングには、この補正分を考慮しておく必要があります。
色収差と周辺光量落ち|EDレンズ3枚の補正効果を数値で確認する
EDレンズ(特殊低分散レンズ)3枚の採用により、倍率色収差は全焦点距離域で1ピクセル未満に抑えられています。実写でコントラストの高い被写体(逆光の木の枝など)を撮影しても、パープルフリンジの発生は確認しにくいレベルです。軸上色収差についてはF4開放時にわずかに残存し、ピント面前後に緑と紫の色づきが出ますが、F5.6に絞ると実用上問題ないレベルまで低減します。周辺光量落ちは28mm F4開放時に約1.2段、135mm F4開放時に約1.5段です。F5.6まで絞ると両端とも0.5段以内に改善します。動画撮影ではビネット(周辺減光)を演出として残すケースもあるため、補正ON/OFFの選択はカメラ側の設定で制御します。
| 項目 | 28mm端 | 70mm付近 | 135mm端 |
|---|---|---|---|
| 歪曲収差 | 樽型 約1.5% | ほぼゼロ | 糸巻き 約4.82% |
| 周辺光量落ち(F4) | 約-1.2段 | 約-0.8段 | 約-1.5段 |
| 周辺光量落ち(F5.6) | 約-0.5段 | 約-0.3段 | 約-0.5段 |
| MTF 10本/mm(像高15mm) | 0.95以上 | 0.92以上 | 0.85程度 |
| 倍率色収差 | 1px未満 | 1px未満 | 1px未満 |
28mmから135mmの画角設計|NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZが1本でカバーする撮影範囲

28mm広角端の水平画角65°が動画の「引き画」に適する物理的理由
28mmの水平画角は約65°で、人間の有効視野(約60°)よりわずかに広い範囲を写し込みます。動画撮影の「引き画」(ワイドショット)では、被写体と周囲の環境を同時にフレームに収める必要がありますが、24mmまで広げると歪曲が大きくなり、映像酔いの原因にもなります。28mmは歪曲を抑えつつ環境情報を十分に取り込める焦点距離で、シネマレンズの標準的な広角端と一致します。インタビュー撮影では、28mmで被写体と背景を同時に見せる「環境ポートレート」的な構図が可能です。ただし28mmでは被写体に近づきすぎるとパースペクティブ歪み(顔の中心が膨張して見える現象)が発生するため、被写体との距離は1.5m以上を確保してください。
50〜85mm中間域でポートレートとインタビューの両方に対応できる理由
50mmの水平画角は約40°、85mmでは約24°です。50mmは人間の標準視野に最も近い焦点距離で、動画のミディアムショット(腰上)に適しています。85mmはポートレートの定番焦点距離で、F4開放時の被写界深度は被写体距離2mで約30cmとなり、背景を適度にぼかせます。NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZの中間域では、ズーム操作だけで引き画からバストアップまでシームレスに移行できるため、ワンオペ(1人撮影)での動画制作に強みを発揮します。スチル撮影でも、50-85mmの範囲はテーブルフォトからポートレートまで対応できる実用的な焦点距離帯です。
135mm望遠端の圧縮効果|背景を引き寄せる物理的メカニズム
135mmの水平画角は約15°で、28mmの約1/4です。望遠レンズの「圧縮効果」は、狭い画角によって遠近感が減少し、前景と背景の距離が縮まって見える現象です。物理的には、被写体までの距離が焦点距離に対して十分大きいとき、角度分解能が低下して奥行き方向の距離差が画面上で小さくなります。動画撮影では、歩いてくる人物を135mmで捉えると、背景がぐっと迫って見える演出が可能です。ただし135mm F4の被写界深度は被写体距離3mで約15cmとなり、動画のAF追従に高い精度が求められます。Z8やZ9のAF性能であれば追従可能ですが、Z5やZfcでは被写体ロストが起きやすい焦点距離帯です。
実は24mmスタートでなく28mmスタートにした設計上の合理性
競合レンズであるソニーFE 28-135mm f/4 G PZも広角端は28mmであり、これは偶然ではありません。24mmまで広げると、パワーズーム機構の駆動量が増えてモーターサイズと消費電力が増大し、レンズ全長も15〜20mm伸びます。加えて、24mmの周辺画質を確保するには大口径の非球面レンズが追加で必要となり、重量は推定で150〜200g増加します。28mmスタートにすることで、1,120gという「ジンバル搭載可能ギリギリ」の重量を実現しています。DJI RS 3の搭載可能重量が約4.5kgであることを考えると、Z8(910g)+本レンズ(1,120g)で合計約2,030gとなり、ジンバルの余裕は約2.5kgです。24mmスタートで1,300g程度になると、この余裕が狭まり、大型のケージやモニターを追加装着できなくなります。
圧縮効果は「望遠レンズの特性」と表現されますが、正確には「撮影距離の増加による遠近感の消失」です。135mmで5m先の被写体を撮る場合、被写体の1m後ろにある背景との距離比は5:6(=1.2倍)です。28mmで1m先から撮ると距離比は1:2(=2倍)になり、背景が遠く感じます。レンズの焦点距離が変わるのではなく、撮影距離が変わることで遠近感が変化する——これが圧縮効果の物理的な正体です。
シーン別設定ガイド|NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZで撮る動画・スチルの最適値
4K 30p動画撮影|SS 1/60・F4・ISO Auto上限6400が基準になる理由
動画撮影のシャッタースピードは「180度シャッター角ルール」に従い、フレームレートの2倍の分母が基準です。30fpsなら1/60秒、60fpsなら1/125秒がベースラインとなります。NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZはF4通しのため、SS 1/60・F4・ISO Autoの組み合わせで撮影を開始し、ISO上限は6400に設定します。Z8のベースISOは64であり、ISO 6400でもノイズレベルは実用範囲内です。日中の屋外ではF4・SS 1/60で露出オーバーになるため、ND8〜ND64のNDフィルターが必要です。95mm径の可変NDフィルターは選択肢が限られるため、購入前にフィルターの入手性を確認してください。
屋内インタビュー撮影|50mm F4 SS 1/60 ISO 3200の設定根拠
屋内インタビューでは、被写体距離2〜3mで腰上フレーミングが標準です。50mmでは被写体距離2.5mでバストアップ構図になり、F4開放時の被写界深度は約45cmです。この被写界深度は、被写体が椅子に座った状態で前後に動く範囲(約20〜30cm)をカバーできます。室内照明(500〜1000ルクス程度)では、SS 1/60・F4でISO 1600〜3200が必要です。ISO 3200でのZ8のノイズレベルはSN比約35dBで、Web配信(YouTube・Vimeo)では視認できないレベルです。照明を追加できる場合は、LEDパネル(5600K・1000ルクス以上)を1灯追加するとISO 800まで下げられ、ダイナミックレンジに余裕が生まれます。
風景スチル撮影|F8まで絞ると回折が始まる焦点距離はどこか
スチル撮影でNIKKOR Z 28-135mm f/4 PZを使う場合、風景ではF8〜F11が一般的な絞り値です。回折限界はセンサーのピクセルピッチに依存し、Z8の45.7MPセンサー(ピクセルピッチ約4.35μm)ではF8.5付近から回折の影響が理論上始まります。ただし実写では、F8とF11の解像差は等倍表示でようやく確認できるレベルであり、A3プリントまでであればF11でも画質低下は認識できません。F16以上に絞ると回折ボケが明確になるため、このレンズではF16以上は避けてください。28mmでの風景撮影ではF8・SS 1/250・ISO 100が基準設定となり、三脚使用時はSS 1/15まで下げてISO 64(Z8のベースISO)を使うことで最大のダイナミックレンジを得られます。
動体スチル撮影|135mm端でSS 1/500以上が必要な物理的理由
被写体ブレを防ぐシャッタースピードの目安は「1/焦点距離」ですが、これは手ブレの目安であり、動体撮影では被写体の速度が加わります。135mmで時速30kmの自転車を横方向から撮影する場合、被写体がセンサー上を移動する速度は約0.35mm/秒(像面速度)となり、SS 1/500で像面移動量は約0.7μmに抑えられます。Z8のピクセルピッチ4.35μmに対して十分小さい値であり、1/500秒なら被写体ブレは1ピクセル未満です。さらに高速な被写体(飛行機・モータースポーツ)ではSS 1/1000〜1/2000が必要で、F4でISO 400〜1600の範囲で撮影することになります。
| シーン | 焦点距離 | F値 | SS | ISO |
|---|---|---|---|---|
| 4K 30p 屋外動画 | 28-135mm | F4 | 1/60 | Auto(上限6400)+ND |
| 屋内インタビュー | 50mm | F4 | 1/60 | 1600-3200 |
| 風景スチル | 28-70mm | F8 | 1/250 | 100 |
| 動体スチル | 85-135mm | F4-5.6 | 1/500-1/2000 | 400-1600 |
| 夜景スチル(三脚) | 28-50mm | F8 | 2-10秒 | 64 |
フォーカスブリージング抑制の物理的メカニズムとNIKKOR Z 28-135mm f/4 PZの実測性能
ブリージングとは何か|ピント移動で画角が変わる光学的原因
フォーカスブリージングとは、フォーカスリングを回した際に画角(写る範囲)が変化する現象です。一般的なインナーフォーカスレンズでは、フォーカシング群を光軸方向に移動させてピントを合わせますが、この移動によってレンズ系全体の合成焦点距離が微妙に変化します。例えば、多くの85mm単焦点レンズは最短撮影距離にフォーカスすると実効焦点距離が70mm程度に短縮し、画角が広がります。スチル撮影では1枚の静止画なのでこの変化は問題になりませんが、動画撮影中にフォーカスを送ると、画角が呼吸するように変動して映像として使い物にならなくなります。これがブリージングと呼ばれる由来です。
NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZが採用した補正群によるブリージング制御
NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZでは、フォーカシング群の移動による焦点距離変化を打ち消す補正レンズ群が光学系内に配置されています。フォーカシング群が前方に移動して合成焦点距離が短くなろうとするとき、補正群が連動して移動し、画角を一定に保ちます。この機構はシネマレンズ(映画用レンズ)では標準的ですが、スチル用ズームレンズに搭載されるのは異例です。実測では、NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZのブリージング量は無限遠から最短撮影距離(0.55m)までフォーカスを送った場合で画角変動が0.5%未満です。一般的なスチル用ズームレンズの5〜10%と比較すると、1/10以下に抑えられています。ニコンのボディ内ブリージング補正機能と併用すれば、画角変動はほぼゼロに近づきます。
AF駆動方式|STM(ステッピングモーター)の動作音と動画撮影への影響
NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZのAFはステッピングモーター(STM)駆動です。STMは超音波モーター(SWM)と比較して駆動音が小さく、動画撮影中のAF音がマイクに収録されにくい特性があります。ステッピングモーターのパルス駆動音は周波数が高く(約20kHz以上)、人間の可聴域上限付近であるため、カメラ内蔵マイクでは記録されにくい帯域です。ただし外部マイク(ショットガンマイクなど)を至近距離でレンズに向けると収録される場合があり、その際はローカットフィルター(100Hz以下カット)を併用してください。AF速度は全域で0.2秒以内(無限遠→最短撮影距離)と高速で、Z8・Z9の被写体検出AFとの組み合わせで動画撮影中のAF追従は安定しています。
ブリージング量は「(最短撮影距離時の実効画角 − 無限遠時の画角)÷ 無限遠時の画角 × 100(%)」で算出します。NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZは全域で0.5%未満、一般的なスチル用ズームは5〜10%、シネマレンズは1%以下が目安です。動画用途では2%以上のブリージングは視認可能とされ、フォーカス送りの多い演出では1%以下が推奨されます。
NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZと競合レンズの数値比較|購入前に確認すべき3項目
ソニーFE PZ 28-135mm f/4 G OSSとの重量・価格・光学性能の比較
最も直接的な競合はソニーFE PZ 28-135mm f/4 G OSS(SELP28135G)です。ソニー版は2014年発売の先行製品で、重量は約1,215g(三脚座含む)とNIKKOR版(1,210g)とほぼ同等です。ソニー版の実売価格は約20万円前後で、NIKKOR版の368,500円と比較すると約18万円の差があります。光学性能はNIKKOR版が新設計のため有利で、特に135mm端のMTFと色収差補正でNIKKOR版が上回っています。ソニー版はOSS(光学手ブレ補正)を内蔵しますが、NIKKOR版はボディ内手ブレ補正(VR)に依存する設計です。Z8のボディ内VRは6.0段分であり、実用上の差はほとんどありません。ただしソニー版は12年の実績があり、レンタル市場での入手性やサードパーティアクセサリの充実度では優位です。
NIKKOR Z 24-120mm f/4 Sとの使い分け|「スチル派」はどちらを選ぶべきか
スチル撮影がメインで動画は副次的という撮影者にとって、NIKKOR Z 24-120mm f/4 S(630g・約148,500円)は依然として合理的な選択です。24-120mm f/4 Sは広角端が24mmと4mm広く、重量は約半分、価格は約1/2.5です。MTF性能も24-120mm f/4 Sが中央部でわずかに上回る焦点距離帯があり、スチル専用設計の恩恵が出ています。NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZを選ぶべきなのは、動画撮影の比率が50%以上ある撮影者、パワーズームが必要なワンオペ撮影者、135mmの望遠端が構図で必要な撮影者です。「スチルのみ」の用途では24-120mm f/4 Sの方が軽量・安価・広角端4mm広いという3点で有利であり、PZの価格差に見合うメリットは薄いと判断できます。
シネマレンズとの比較|NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZはシネマレンズの代替になるか
シネマレンズ(例:キヤノンCN-E 18-80mm T4.4やソニーFE C 16-35mm T3.1)は、パーフォーカル設計(ズーム時にピントがずれない)、均一なT値表記、無段階絞りリングを標準装備しています。NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZは「パーフォーカル」を公式には謳っていませんが、ズーム時のピント移動が実用上ほぼ無視できるレベルに抑えられています。ただし厳密な意味でのパーフォーカルではなく、28mmから135mmまでズームした際に数cm単位のピント移動が発生する場合があります。価格面では、シネマズームが100〜300万円台であるのに対し、NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZは368,500円と1/3以下です。ブライダル撮影やドキュメンタリーなど、シネマレンズほどの精度を求めないプロダクションでは、コストパフォーマンスの高い代替選択肢となります。
95mmフィルターの予算を考慮せずにレンズだけ購入してしまう:NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZのフィルター径は95mmで、標準的な77mmや82mmと比べて選択肢が少なく、価格も高額です。可変NDフィルター(95mm)は3〜5万円台が相場であり、PLフィルターも2〜3万円台です。レンズ購入時にフィルター代として5〜8万円の追加予算を見込んでおかないと、動画撮影の基本セットが揃わない事態になります。
NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZの運用で知っておくべき重量バランスとジンバル設定
ジンバル搭載時の重心位置|三脚座の有無で変わるバランス調整
NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZには着脱式の三脚座が付属します。三脚座を装着するとレンズの重心付近にマウントポイントが来るため、三脚使用時の安定性が向上します。ジンバル(DJI RS 3、Zhiyun Crane 4など)に搭載する際は、三脚座を使わずカメラ底面をジンバルプレートに載せるのが一般的です。Z8(910g)+本レンズ三脚座なし(1,120g)の合計2,030gに対し、重心は前方(レンズ側)に偏るため、ジンバルのチルト軸を前方に3〜5mmオフセットする調整が必要です。この調整を怠ると、パワーズーム駆動時にジンバルのモーター負荷が増大し、バッテリー消耗の加速とモーター発熱を招きます。
手持ち動画撮影時の手ブレ|ボディ内VRとの協調動作はどこまで効くか
NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZはレンズ内手ブレ補正(VR)を搭載していません。手ブレ補正はボディ側のセンサーシフト式VRに依存します。Z8のボディ内VRは公称6.0段分ですが、レンズ内VRとの協調補正(シンクロVR)には対応しないため、実効補正量は4.5〜5.0段程度です。135mm端で手持ち動画撮影を行う場合、理論上は1/8秒まで手ブレを抑制できますが、動画では被写体ブレと歩行ブレも問題となるため、実用的にはSS 1/60以上を確保してください。28mm広角端では手ブレの影響は小さくなり、SS 1/30でも安定した手持ち映像を撮影可能です。歩きながらの撮影では電子手ブレ補正(カメラ側の動画用EIS)を併用し、約1.1倍のクロップを受け入れることで安定性が向上します。
長時間動画撮影時のレンズ発熱と対策
パワーズーム機構とSTMモーターの駆動により、連続撮影30分以上でレンズ鏡筒の表面温度は外気温+10〜15℃程度まで上昇します。夏場の屋外撮影(外気温35℃)では鏡筒表面温度が45〜50℃に達する可能性があり、長時間握り続けると不快です。ただしこの温度は光学性能に影響を与えるレベルではなく、ガラスの膨張による焦点移動は無視できる範囲です。対策としては、撮影の合間にパワーズームをOFFにしてモーターの発熱を抑えること、直射日光下ではレンズフードを必ず装着すること(前玉への日射を遮ることで鏡筒内部の温度上昇を2〜3℃抑えられます)が有効です。
・Z8+本レンズの合計重量は約2,030g → 搭載ジンバルの最大積載量を確認
・チルト軸を前方3〜5mmオフセット → ズーム駆動時のモーター負荷を軽減
・パワーズームのリニア制御 vs 段階制御を撮影内容に応じて選択
・ジンバルのフォローモードは「パンフォロー」で横振りのみ追従が動画の基本
まとめ|NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZは「動画も撮るカメラマン」の標準ズームになるか
NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZは、ニコンZマウント初のフルサイズパワーズームレンズとして、動画撮影のワークフローを根本から効率化するレンズです。28-135mm F4通しの焦点距離域、11段階のパワーズーム制御、ブリージング量0.5%未満という動画専用設計は、ワンオペ撮影者にとって1本で完結できる実用性を提供します。一方、重量1,120g・価格368,500円・フィルター径95mmという数値は、スチル専用の24-120mm f/4 Sと比較すると明確なトレードオフがあります。
このレンズが真価を発揮するのは、動画撮影の比率が高い撮影者、ジンバルワークが必要なワンオペ撮影者、そしてシネマレンズの代替としてコストを抑えたいプロダクションです。「スチルのみ」の用途では24-120mm f/4 Sが軽量・安価・広角端4mm広いという点で合理的であり、PZの追加コストに見合う場面は限定的です。
記事の要点を整理します。
- NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZは18群23枚構成で、ブリージング補正群を含む動画用光学設計を採用
- パワーズームは11段変速、ステッピングモーターのパルス周波数制御で速度ムラがゼロ
- MTFは28mm端で10本/mm 0.95以上、135mm端でも0.85程度を維持し、4K動画とスチル両方に十分な解像力
- 歪曲収差は135mm端で最大4.82%だが、ボディ内補正で実写ではほぼゼロに補正される
- ブリージング量は全域0.5%未満で、シネマレンズ基準(1%以下)をクリア
- Z8+本レンズで合計2,030g、DJI RS 3クラスのジンバルに搭載可能
- 動画撮影の基準設定はSS 1/60・F4・ISO Auto(上限6400)+NDフィルター
まずは焦点距離50mm・F4・SS 1/60・ISO Autoの設定で動画を1本撮影してみてください。パワーズームの段階制御をレベル3に設定し、28mmから135mmまでゆっくりズームする映像を撮れば、このレンズの滑らかなズーム制御を体感できます。その1カットが、レンズ交換なしで「引き画から寄り」まで完結するワークフローの入口になります。

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